あなたの会社の想像力をはぐくむ方法
私たちは現在、想像力豊かな企業をテーマにした新著を準備している。その著書のための研究を基に、本稿では、会社の想像力をはぐくむための必須条件を7つ指摘したい。
(1)内省のための時間を確保する
危機のときは、リーダーやマネジャーの仕事が大幅に増える。そうした状況では、ただでさえ少ない内省の時間がますます少なくなる。だが、立ち止まって一歩うしろに下がり、内省をしなければ、物事の全体像は見えない。ましてや、未来をどのように形づくればよいかは見えてこない。
ビジネスの世界で、人はほとんどの時間、本能に根差した「闘争・逃走反応」に基づいて行動している。この神経上の仕組みは、獰猛な肉食獣から逃れるなど、極度の重圧がのしかかる局面で適切な行動を取るために進化してきたものだ。闘争・逃走反応には、人の集中力を高めて視野を狭める作用がある。
これに比べるとあまり注目されていないが、人間には副交感神経系の「休息と咀嚼」の仕組みも備わっている。この仕組みは、リラックスした状態のときに、精神と肉体の活動をマネジメントする役割を担う。狩猟採集生活を送っていた時代の人間は、過酷な狩りで精神をすり減らした後、家族のもとに戻って、1日の出来事を振り返り、時にはもっと上手に狩りをする方法を考えたりもしていたのだろう。
私たちは現在の危機を乗り越えるために、ビジネスにおいても行動と内省のリズムをつくるべきだ。闘争・逃走反応を休止して、内省を促すために有効な方法としては、以下のようなものがある。
・息を短く大きく吸い込み、それよりも長い時間をかけて息を吐き出す。
・食事をとりながら、休息、反芻、内省の時間を取る。
・音楽を聴いたり、演奏したりする。
・スマートフォンを持たずに散歩に出かける。
(2)イエス/ノーで答えられない、能動的な問いを発する
危機が起きているときは、問いに対する直接的な答えが得られない場合も多い。そこで、良質の問いを投げかけることが重要になる。
危機で最も自然に浮かび上がる問いは、「私たちはどうなってしまうのか」といった受動的なものだ。しかし、「どうすれば、新しい選択肢を生み出せるのか」といった能動的な問いを投げかけてはじめて、自分たちに有利な状況を形づくれる可能性が出てくる。
創造性を発揮するとは、前例や既存の選択肢に囚われることなく、新しいアイデアや新たなアプローチの探求を促進するような問いを発することだ。新型コロナウイルス感染症をめぐる危機で有効な問いには、たとえば以下のようなものがあるだろう。
・どのようなニーズが重要になりつつあるのか。
・どのようなニーズが満たされていないのか。
・私たちが顧客のためにできていないことは何か。
・いま、まったくのゼロからビジネスを立ち上げるとしたら、どのような会社やサービスを築くか。
・現在の得意先は、なぜ私たちと取引を続けてくれているのか。
(3)遊び心を持つ
言うまでもなく、危機のときは目標を意識して、真剣に対処しなくてはならない。しかし、激しいストレスにさらされている人は見落としがちだが、人間が持つ「遊び」の能力も重要だ。
ここで言う「遊び」とは、目指すべき目標を一時的に忘れて、即興で行動することを意味する。生物学の分野では、遊びは、リスクを取り除いた環境で素早く学習するためのものと位置づけられる。たとえば、幼い動物の模擬闘争行動は、将来の実際の戦闘に向けた準備として非常に有効だ。
前例がない状況で、さまざまなものごとが急速に変化しているとき、遊びの能力はきわめて大きな意味を持つ。まず、遊びを実践することにより、ストレスをやわらげる効果が期待できる。この危機の下、朝から晩まで仕事をし続けている人も多いだろう。そのような状況で、ストレスを軽減することは非常に重要だ。
しかし、遊びの意義はそれだけではない。意外に思えるかもしれないが、遊びはきわめて生産的な活動にもなりうる。目標をまっしぐらに追求し、そのために役立つ行動だけを規則正しく行う姿勢を少しやわらげると、さまざまなアイデアを組み合わせ、新たな興味深い結びつきを生み出す道が開けてくる。
「創造性とは、既存の知識を並べ直し、新たな有用な組み合わせを生み出すこと」と、レゴ・ブランド・グループのヨアン・ヴィー・クヌッドストープ会長は私たちに語っている。「レゴのブロックで遊ぶときと同じように、そうした取り組みが価値あるイノベーションを生むことがある。グーグルの検索エンジンやエアビーアンドビーのビジネスモデルなどは、その例だ」
遊びは、すぐ役に立つものを生まない場合もある。しかし、少なくとも遊びを通じて、想像と即興とひらめきを実践できる。これらはすべて、未知の世界を生き抜くうえで重要な要素だ。