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新型コロナウイルス感染症のような重大な危機に直面すると、組織も個人も生き残りを最優先に考えて、学習を放棄しがちである。だが、その発想はとても危険だ。変化が必須の状況で生き残るためには、ビジネスも自分自身も変わるために学び続けることが不可欠である。オンラインでの学習のカギを握るのは、「認知学習」だけでなく「社会性と情動の学習」の重要性を認識することだと筆者は言う。


 この5年ほど、筆者らは研究活動を少しずつオンラインに移行させてきた。勤務するビジネススクールのINSEADでは、バーチャル会議を拡大し、バーチャル授業とコーチングを強化し、対面授業を充実化するデジタルツールを導入してきた。

 だが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、ここ数週間ですべてがオンライン化しつつある。多くの組織でそうであるように、あらゆる人の仕事とプライベートが大混乱に陥る中、その移行はほぼ一夜にして起こった。

 このような状況では、組織もリーダーも生き残りが最優先になり、学習は二の次、三の次になっても無理はないと思われがちだ。実際、企業はいつもそうやってきた。

 研修などの大規模な学習イニシアティブも、ミーティング後のフォローアップのような小規模な学習イニシアティブも、とりあえず取りやめだ。景気低迷期は、学習関連の予算はばっさりとカットされ、メンタリングは中止になる。

 混乱のときは不安が高まり、これまで通りの世界を維持しなくてはという本能が働く。リーダーは、多様な人材を迎え入れたり、能力を開発したりする活動はひとまず横に置いて、指揮統制モードに回帰する。「学習なんて、いまは忘れろ!」「事業を維持し、基本的なことを達成しなければならないときに、学習なんてやっている余裕はない」というわけだ。

 これは危険だ。大規模な危機のときと同じように、いや、それ以上に、新型コロナウイルスのパンデミックは、仕事や企業のあり方を永遠に変えるだろう。そんなとき、学習は組織にとっても、組織を構成する個人にとっても、生き残りの基礎となる。

 世界がオンラインワークにシフトし、企業がみずからの再編に苦心する中でも、どのような商品やサービスが消費者にアピールし、それをどうやってつくるかを組織は学ばなくてはならない。また、リーダーは、あちこちに散らばった従業員の意識を集中させ、元気づけ、顧客の変わりゆくニーズを把握させなければならない。

 CEOであれ、シニアマネジャーであれ、新入社員であれ、学習を怠れば、適応力は伸びなくなり、リーダーシップを取るチャンスは失われる。