これをきちんとやるためにはまず、リーダーと教員が、学習の仕組みを理解する必要がある。職場でもそれ以外の場所でも、人間の学習方法は大きく分けて2つあることが、さまざまな研究からわかっている。

 第1は、認知学習(cognitive learning)だ。私たちは情報を吸収し、処理し、応用することによってタスクを成し遂げる。認知学習では、情報とスキルが中心になるが、このような事実に関する情報は、授業や論文や同僚から得られるかもしれないし、スライドを作成してプレゼンすることで伝えられるかもしれない。リモート学習と聞いたとき、たいていの人が思い浮かべるのは、もっぱらこの認知的学習であることが多い。

 第2の学習方法は、社会性と情動の学習(socio-emotional learning)である。私たちは、自分(と仲間)が現在の新しい状況をどのように感じ、考えているかを理解し、その感情や思考を管理する方法を学ぶ。このタイプの学習では、人間を重視して、自分と他者の経験を知る必要がある。

 認知学習が、自然の世界を管理する方法を教えてくれるように、社会性と情動の学習は、社会的な世界を管理する方法を教えてくれる。「エスキモーに冷蔵庫を売り込む」という皮肉があるように、まず相手のことを知らなければ、どんな営業ツールも価値がない。

 私たちは認知学習を正しくやろうとするあまり、社会性と情動の学習を忘れがちだ。しかし、これまでとは根本的に異なる環境に適応しようとするとき、社会性と情動の学習こそ、私たちが重視するべき領域だ。

 たとえば、ビデオ会議をするときはまず、各出席者に現在の状況を話してもらう。そのうえで、これまでとは異なる目標を新しい方法で達成するためには、どのような協力が必要かを語り合ってもらえば、社会性と情動の学習を推進できるかもしれない。

 筆者の同僚たちは、オンラインで授業をすることになって以来、生徒たちの戸惑いに対処することと、カリキュラム通りに授業を進めることの間で、難しいバランスを強いられてきた。そこで、認知学習よりも社会性と情動の学習を優先したところ、生徒たちは現実を受け入れ、学習への心構えを整えることができたという。

 ある同僚は、授業を短い瞑想で始めることにした。別の同僚は、全員でシェアできるホワイトボードのようなものに、リモートワークになって感じていることを書き込んでもらった。どちらの同僚も、こうした時間をつくったおかげで、教員も生徒も互いへの信頼を確認して、活発な授業を進められるようになったという。

 その後の調査(デジタルツールを使えば簡単にできる)で、生徒たちも、こうした時間が日々の授業で最も役に立ったと答えた。この種の学習は、準備するものでも、一方的に伝えるものでもなく、リーダーがファシリテートし、全員が協力して構築するものだ。