
新型コロナウイルス感染症のパンデミックがいつ終息するのか、私たちの生活にどれほどの打撃をもたらすのかは、誰にもわからない。従業員は将来に大きな不安を抱えており、あなたが答えに窮するような厳しい質問をされることもあるだろう。そんなとき、心配無用だと突き放したり、根拠なくなだめたりしては不信感を抱かせるだけだ。本稿では、リーダーとしてこの難題にどう向き合うべきか、その具体策が示される。
最近、私が立ち会ったオンラインのタウンホールミーティングで、クライアントが質問攻めに遭った。彼と彼の率いる経営陣は、全社員に対して、パンデミックやリモートワーク、そしてすべてのステークホルダーへの影響に関する質問に答えることになっていた。
このミーティングに先立ち、私はクライアントに、平静を保ち、他人の不安感で自分が押し潰されないようにと話しておいた。それでも、彼はいくつかの質問で不意を衝かれてしまった。
自社には国の補助金を受け取る資格があるのかと尋ねられた際、クライアントは自己防衛的な口調で、心配いらないとだけ答えて終わりにした。その答えを聞いて落ち着きを失った聴衆をなだめようと、今度は安心させるようなことを語り始めたが、その根拠を示さなかった。このため聴衆はさらに混乱し、不安に駆られた。
ミーティングが終わるまでにはなんとか失地回復したものの、彼は自分が犯したミスの後始末に追われることになった。
このクライアントの経験を他人事とは思えないリーダーは、少なくないはずだ。新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミックで、すべての人が未知の世界に放り出された。誰もが不安を抱え、この先どうなるのかと日々新たな疑問にさいなまれる。
その大半が、経営陣に投げかけられる。経営陣は皆の力になり、共感し、「コントロールできている」ことを示そうとするあまり、すべての質問に答えようとする。ところが、いかに誠心誠意答えたところで、実際には状況を悪化させるおそれがある。
リーダーであれ、教師であれ、親であれ、あなたはいま、答えるのがとりわけ難しい質問、自分でも納得できる答えのない質問を投げかけられているのではないだろうか。しかし、そのような問いかけに対して有益かつ誠実に応じることは、不可能ではない。