HBR Staff

リモートワーク中のコミュニケーションはウェブ会議が中心になるが、あなたは集中できているだろうか。議論を聞き流してメールを返信しているとすれば、その時間は無駄になってしまう。会議の時間を実りあるものにするには、たくさんの発言をすることよりも、思慮深く、積極的に話を聞く姿勢が重要である。本稿では、それを実践するための5つの方法を紹介する。


 あなたはビデオ会議に参加している。スクリーンに並ぶ9つの顔のうちの1つが、あなただ。

 会議が始まって10分もすると集中力が切れてきて、いま誰がどんな発言をしたかもわからなくなっている。聞いているふりをしながら、あなたはメールの受信ボックスのチェックを始める。会議が終わる頃には、メールを何通か処理することはできたものの、ビデオ会議は時間の無駄だったと感じている。

 このシナリオ、昨今は誰もが身に覚えがあるのではないだろうか。

 リーダーがウェブ会議を効果的に運営する方法について、多くの適切なアドバイスがある。それも大切だが、しばしば見落とされているのは、会議を実りあるものとするために、聞き手が果たす役割だ。

 1913年にフランスの農業工学者マックス・リンゲルマンが発見した現象は、ウェブ会議が失敗しやすい理由を説明している。リンゲルマンは、まずチームで綱引きをさせた。次に、一人ひとり個別に同じ綱を引かせた。すると、チームで綱を引くときよりも一人で引くときのほうが、個人は力を出すことがわかった。

 これは「リンゲルマン効果」と呼ばれる。集団が大きくなればなるほど、個々人は成功を実現させる責任を感じなくなるのだ。自分は任務の成功に不可欠だと感じていないと、関心が薄れたり、力を出し惜しみしたりしやすい。どうせ誰も気づかないだろう、というわけである。

 ウェブ会議、特に電話会議では、リンゲルマン効果が増大する。実際に部屋にいて、会議のために「綱を引く」ことができない状況では、耳を傾け、参加する意欲が低下しやすい。自分が必要とされていないと感じるようになればなるほど、注意力は散漫になり、会議に貢献しなくなる。そして、会議への貢献が少なくなれば充実感も薄れる。

 残念なことに、この注意力散漫の力学は、会議の成果を乏しくするだけではなく、聞き手であるあなたの体験をも惨めなものにする。2010年のハーバード大学の心理学者による研究では、いま目の前の出来事に集中できないと不満が高まることがわかっている。会議中は気が逸れやすいものだし、気を逸らしたくもなるが、それでは結局、充実感がない。

 どうすれば、リンゲルマン効果を最小限に抑えて、ウェブ会議にもっと貢献する(そして、より多くを得る)ことができるだろうか。その解決策は、より多く、より声高に発言することではない。むしろ効果的な参加の秘訣は、思慮深く、的を絞った聞き方にある。

 特にバーチャルな状況では、積極的に話題に参加し、周囲の役に立つような聞き方が必要となる。次回のウェブ会議でより効果的な聞き方をするために、5つの方法を紹介しよう。