
平時おいてリーダーにできることは限られており、組織構造や社会構造が成果を大きく左右する。だが、新型コロナウイルス感染症のような危機に直面したとき、リーダーの決断は成果に直結する。優れたリーダーとは、目先の問題を解決するだけでなく、危機後を見据えた持続可能な変化をもたらせる人物だ。本稿では、ギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相を例に挙げて、リーダーのあるべき姿を示す。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は間違いなく大惨事だが、すべての社会学者が待ち望んでいるものを提供している。すなわち、似たような衝撃に対して異なる反応を比較できる「自然実験」だ。
私たちはすでに、ウイルスそのものと戦うために何が有効で、何が有効ではないか、多くのことを学んでいる。リーダーの役割についても、奥深い教訓が生まれている。
イタリアで最初に新型コロナウイルスの打撃を受けた、ロンバルディア州とヴェネト州の経験を振り返ってみよう。どちらの地域も繁栄していて、堅固なインフラがある。人口密度がわずかに異なるだけで人口統計学的に似ており、感染はほぼ同時期に始まった。
しかし、その結果は大きく異なる。4月末の時点で、ロンバルディア州が確認した感染者は1000人当たり6.75人、死者は1.24人。ヴェネト州はそれぞれ3.59人と0.27人だった。
なぜ、これほど大きな違いが生じたのか。その理由は、今回の危機にはよく見られることだが、対応の速さと性質にある。