キャリアを中断していた医療従事者と技術者の職場復帰成功と、その幅広いプラス効果は、すでに注目を浴びつつある。

 ハーバード・メディカル・スクールのデイビッド・グラボウスキ教授(保健政策)は、ニュースサイト「ネクスト・アベニュー」のインタビューで、「この危機的な時期に、医師や看護師を復帰させるのは素晴らしいアイデアだ」と語っている。「この仕組みを常設化するべきだ。職場復帰を希望する医師と看護師を活用する、もっと体系的な仕組みをつくるのだ」

 これは正しい見解だ。これを機に、従来の職場復帰プログラムを、より正式なものとして整備すべきである。

 銀行業界をはじめとする金融部門では、過去12年ほどの間に、こうした職場復帰プログラムが急増してきた。テクノロジー分野でも、職場復帰プログラムが各企業ベースで、あるいはSTEM再就職タスクフォースなどのイニシアチブの一環として整備されつつある。このタスクフォースには現在、大小さまざまな32社が参加しており、その業種も国防から消費財まで多岐にわたる。

 医療分野では、医師と看護師の職場復帰プログラムがいくつかあるものの、大規模な仕組みはできていない。コロナ禍が去ったときは、医療従事者の不足(コロナ前から問題だった)が、部分的には解消できるに違いない。

 その際は、アレゲニー・ヘルス・ネットワークの「リターン・トゥ・プラクティス」プログラムや、カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の教員による協力で設置された「医師再訓練と再就職プログラム」、そしてドレクセル大学医学部の「医師再教育/再訓練プログラム」などがモデルになるだろう。

 企業の職場復帰プログラムは、インターンシップに近い「リターンシップ」か「直接雇用」のどちらかの形をとる。直接雇用の場合、対象者は職場復帰の1日目から従業員であり、能力開発研修やグループ研修やメンタリングシステムなどによって、職場に溶け込むサポートを受けることができる。

 リターンシップ・プログラムの場合も、期間終了後の正式採用率は平均80%を超える。これは、プログラム参加者のレベルの高さを物語る数字と言っていいだろう。

 企業は、こうした職場復帰プログラムを使って、親の介護や子育て、みずからの健康問題、あるいは配偶者の外国転勤などによりキャリアを中断していた、ポテンシャルの高い専門職を確保しようとしている。なかには、「リタイア中止組」や退役軍人をターゲットにしている会社もある。

 興味深いことに、フォーチュン50の中で社内に職場復帰プログラムを設けている企業は28社もあるのに、フォーチュン500になると、その割合はまだ6%にも満たない。

 そこには明白なチャンスがある。その有能な人材プールは、まれに見るものだ。今回のコロナ禍の間に職場復帰を果たした人たちは、社会が最も暗くなっているときに傑出した働きをして、「キャリア中断者」に対する偏見や、採用を躊躇する声を吹き飛ばしてきた。

 多くの人が仕事を失い、経済的困窮を恐れているいまは、状況が早く改善に向かうことを願うばかりだ。それがいつになるかはわからないが、いつか改善のときがくることは間違いない。そのときは、あらゆる分野でキャリア中断組の採用と再統合方法を見直すべきであり、すべての業界で職場復帰制度をスタンダードにすべきである。

 専門的な能力を持つ人たちが緊急時に大きな貢献をしてくれることを、私たちは見てきた。また、既存の職場復帰プログラムから、彼らが長期的にも価値をもたらしてくれることがわかっている。この危機が去ったときも、そのことを忘れないでおこう。

注:筆者が会長を務める企業アイリローンチ(iRelaunch)は、女性エンジニア協会とSTEM再就職タスクフォースを共同実施している。また、アレゲニー・ヘルス・ネットワークはアイリローンチのクライアントである。


HBR.org原文:How the Pandemic Has Created New Demand for Older Workers, June 04, 2020.


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