●スキル開発
Z世代の学習は、学校の学習管理の不備によって中断されている。オンライン授業に切り換えた学校も、その多くはプラットフォームを利用する訓練を受けていない教員や教授が行っている。対面による指導を最小限にして、生徒や(学年によっては)保護者に、自主学習やデジタルリソースの利用を促している学校もある。
ただし、オンライン学習の大半は、やはり家にこもって家事や仕事など複数の役割をこなしている家族全員と、同じ空間で行われている。こうした環境では、入念な準備がなければ指導は伝わらない。評価はマルかバツかに単純化され、試験はなくなり、課題の期限は延長されている。
オンラインへの移行は、いまのところは正しい選択肢かもしれないが、代償を伴うだろう。調査によると、Z世代はすでに、大学から社会人への文化の移行の難しさを経験しており、混乱して方向を見失っているかもしれない。
構造的な学習が崩壊しているいま、雇用主と従業員は、Z世代が仕事の世界に適応するまでかなり忍耐強く待たなければならず、異なる世代によるメンタリングやサポートに力を入れる必要があるかもしれない。
雇用主は、Z世代が新しい文化に移行しやすくなるようなプログラムを、熟慮して設計する必要がある。たとえば、オリエンテーションや初期の配属、専門性の開発に絞ったメンタリングについて再考できるだろう。
一般にオリエンテーションでは、業務の手順やシステムの使い方など、職場の基本を短期間で学ぶ。そこで、より包括的なアプローチとして、最初の1年間を職務経験のオリエンテーションと見なすこともできる。さまざまな部署を順番に経験させ、職場の文化に溶け込む手助けをするプログラムも取り入れる。
現場で実際に求められる要件に対応して、戦略的なキャリア支援を提供し、組織の目標に関するトレーニングを行うプログラムを設計すれば、従業員は自分がどの分野に向いているのか、どのような価値をもたらすことができるのかを、理解しやすくなる。
メンタリングも世代の多様性を活用する有効な方法だ。
研究によると、適切なコーチングを受けた新しいプロフェッショナルは、学習が強化されて方向性を与えられているため、より早く成長する。優れたメンターシップを雇用主が最大限に活用するには、世代間の関係を強化するメリットを管理職に理解させて、エンゲージメントを弱めやすい否定的な認識を払拭し、必要な時間とリソースを提供しなければならない。
このような取り組みを成功させる方法の一つは、リバースメンタリングだ。これは若手社員が、先輩や上司のITやソーシャルメディアのスキル向上を支援する。Z世代にとって、こうしたな相互支援の関係は自分たちの専門性を高め、職場への移行を円滑にし、より強固な多世代文化というボーナスを雇用主に提供することができる。
言うまでもなく、今回のパンデミックの最中に職場が求められた最も重要かつ持続的な調整は、リモートワークの導入である。
コロナ危機によって、雇用主は突然の体制変更を余儀なくされたが、職場研究の専門家は長年にわたり、人口動態の性別および年齢的な変化や、ビジネスのグローバル化、テクノロジーの向上をもとに、職場のフレキシビリティを高めることを提唱してきた。オフィスの再開を考え始めている企業は、若い労働者が求めるフレキシビリティの文化に、新しい移行と学習の機会を組み込むことも検討する必要があるだろう。