●知的財産権のことは差し当たり度外視する

 研究によると、多くの企業は、部外者と協働することで自社の強みが「流出」するのではないかと極度に恐れている。その結果、それほど重要でない業務はともかく、自社の最も重要なビジネスに関わることでは他社と協働しようとしない場合が多い。

 たとえば、欧州と米国のいくつかの化学企業は、オープン・イノベーションのパートナーから支援と助言を受ける道を事実上閉ざしていた。自社が解決を目指す最大の問題を秘密にしていたのだ。よその会社に知られれば、将来の特許取得の妨げになりかねないと考えたのだろう。その結果として、この業界でのパートナーシップは実効性を失ってしまった。

 たしかに、知的財産権保護に関する懸念は見過ごせない。しかし、それを心配しすぎると、オープン・イノベーションを軌道に乗せられなくなる場合もある。新型コロナウイルス危機の中では、自社が持っているものを手放さないことよりも、新たに有意義なものを生み出すことに力を入れるほうが妥当だったのかもしれない。

 賢明な企業は、自社をリスクにさらすことを避けつつ、重要な問題でも思い切って他社と協働している。世界レベルの優れた製造システムを擁するスカニアは、自社から30分ほどの場所にある医療機器メーカーのゲティンゲに優秀な製造専門家を数人派遣し、人工呼吸器の増産に協力させた。

 このときスカニアは、自社の中核を成すテクノロジーをまったく危険にさらしていない。その一方で、医療機器の生産に協力し、新型コロナウイルスとの戦いに貢献することにより、自社工場の操業再開を早められる可能性がある。

 ●社員やパートナーのモチベーションを高める

 オープン・イノベーションに着手してしばらくすると、企業は社員やパートナーの自発的・積極的参加の重要性に気づくことが多い。昔ながらの指揮命令は効果が乏しいと思い知らされるのだ。

 社内外の協力を引き出すために、企業は直接・間接のインセンティブを活用する必要がある。そこで、企業は人々の行動を突き動かす真のモチベーションの源について知り、それに応じて行動しなくてはならない。

 オープンソース・ソフトウェアの開発に関する筆者らの研究によれば、ソフトウェア開発者が抱くモチベーションの要因はさまさまだ。

 労働市場で自分の資質をアピールするために、自分が作成したコードを無償で公開したいと思う人もいる。検証と修正、そして自由な共有ができないソフトウェアの開発に反対したいという、強い倫理的懸念に突き動かされて行動する人もいる。企業の中には、自社に欠けているスキルや資産にアクセスする手段になることを期待して、自社の時間と資源を捧げようと考えるケースもあるだろう。

 こうした多様なモチベーションの持ち主をうまく束ねて、自社の目標に結びつけることは、簡単ではない。それを成功させるためには、多大な努力と強い好奇心と、ある程度の謙虚さを持ち合わせていなくてはならない。

 その実践は、新型コロナウイルス危機に対応するために協働を始めたばかりの時期には比較的容易かもしれないが、コロナ後も協働が円滑に進むとは思わないほうがよい。前もってパートナーたちのモチベーションの源を把握し、場合によってはモチベーションを高めるための施策を講じることに努力を払うべきだろう。