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新型コロナウイルス危機に立ち向かうために、多くの企業が自社の利益よりも社会的意義を優先し、業種・業界の垣根を越えた協働を本格的に進めている。こうした取り組みは新型コロナの問題解決に寄与するだけでなく、危機が去ったあとも恩恵をもたらすだろう。本稿では、長年オープン・イノベーションの研究を続ける筆者らが、それを実行するための課題と解決策を明らかにする。


 新型コロナウイルスの感染拡大が始まった頃、社会に悲観的なムードが蔓延する中で、思いがけず勇気づけられる現象が見られるようになった。企業が利益よりも有意義な成果を優先させて、オープンな協働にこれまでになく本腰を入れ始めたのだ。

 ドイツのシーメンスは、部品などを3Dプリンタで製造するためのネットワークである「積層造形ネットワーク」を、医療機器の開発と製造を目指す人すべてに開放した。

 スウェーデンの大型トラックメーカーであるスカニアは、カロリンスカ大学病院と協力し、トレーラーを移動式検査ステーションに改装したり、医療従事者に個人防護具を供給するために自社の約20人の購買・ロジスティクス専門家を動員したりした。

 米国のフォード・モーターは、全米自動車労組、GEヘルスケア、3Mと協力して、自社のピックアップトラック「F150」のシートファン、ポータブル・バッテリーパック、そして3Dプリンタ―製の部品を活用して、ミシガン州の工場で人工呼吸器の生産を開始した。

 このような企業間の協働が人命を救う役に立つことは言うまでもないが、効果はそれだけではない。企業にとっての恩恵も計り知れないほど大きい。平時には、その恩恵が見過ごされがちなだけだ。