
黒人差別に抗議する「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動の始まりは5年以上前だが、ジョージ・フロイド事件をきっかけに全国的な広がりを見せた。米国企業の多くがこの問題に対する声明などを発表し、人種差別に反対する姿勢を明らかにしている。だが、対外的に発せられた声明と、非白人従業員が社内で置かれている実際の状況には大きなギャップがある。
米国で黒人差別に抗議する「ブラック・ライブズ・マター」(BLM)運動が始まったのは5年以上前のことだ。それが今回、とりわけ大きな広がりを見せたことは、黒人に対する警察の残虐性が度を越していることを示している。多くの企業は、声明や誓約を発表して、こうした暴力と距離を置こうとしてきた。
しかし、現代の企業の中でも、やはり人種に基づく暴力が存在する。そして多くの人は、それが不公平で、不正義で、許されないものであることに気づきつつある。
「警察の残虐性」と「企業の残虐性」の最大の違いは、その手段だ。前者は、比較的(絶対的にではないが)身体的な残虐性だ。後者は、もっと制度的で、目に見えない残虐性である。だが、どちらの場合も結果は同じだ。人々は傷つき、しいたげられ、ダメージを受け、打ちのめされる。
企業リーダーが、現在のBLM運動に適切に対応するためには、社内における黒人の経験をよく考慮しなければならない。
筆者らはこの1週間、複数の企業の黒人従業員の話を聞いてきた。そこから浮かび上がってきた共通の問題点は、企業の対外的な声明やコミットメントと、従業員の日常的な経験の間にギャップがあることだ。このギャップは新しいものではないが、それが極めて深いものであることが明らかになってきた。
このギャップを明確に認めている企業もある。資産運用会社ブラッックロックのラリー・フィンクCEOは、「人種的平等にコミットしている企業として、私たちは社内の人種的格差がある領域を検討するとともに、みずからの欠陥を許してはならない」と述べた。ワーナーメディアのジェイソン・キラーCEOは、社内の問題の一つとして人種差別を明示的に挙げ、変革に向けて努力することを約束した。
いま、このときは、企業リーダーが社内の人種的格差に対処するチャンスだ。そのためには、黒人をはじめとする非白人従業員がどのような被害を受けているかを明らかにし、企業別あるいは業界別の対策を明確にし、みずからの説明責任を問う意欲が必要だ。