●自己弁護に走らず問題を特定する

 人種差別が自分の監督下で起こっていることがわかったとき、最もよく見られるリアクションが、自己弁護だ。

 あなたは、報告された差別に個人的に責任を感じるかもしれない。場合によっては、実際に責任があるかもしれない。だが、有害なパターンを打ち砕くために必要なのは、自己弁護ではなく、よく耳を傾け、学習することだ。

 必要な情報は、すでに手元にある場合もある。筆者らの調査で、黒人従業員たちが一貫して口にしたのは、「以前もこういうことがあった」「何度もフォーカスグループをやった」というものだった。

 すなわち一部の企業では、非白人従業員に経験を聞いたり、過去に集めたデータを見直したりしさえすれば、どのような問題が存在するかわかるのだ。難しいのは、そのデータの意味を「きちんと理解」し、それに基づき「行動を起こす」ことである。

 ●社内外で具体的なアクションをとる

 警察の残虐性を非難するだけの大雑把で抽象的な声明では、行動を起こす意欲のある組織というより、有権者を獲得したい政治家のようだ。それは自分たちが反対する物事を述べているだけで、何を目指すかという約束になっていない。

 ひょっとすると、いまは、これまでになく言葉というものに重みがなくなっている。「あれこれ言ったり、やったりしたけれど、総合的には、言ったことのほうがずっと多かった」という事態は避けなければいけない。

 従業員は、対外的な声明と実際のコミットメントのギャップに敏感だ。具体的な行動を約束した企業の好例はウーバーだろう。同社はウーバー・イーツで、黒人が経営するレストランの注文には、配達料金を取らないと発表した。また社内的には、経営幹部の報酬を、ダイバーシティの実現度と連動させることにした。

 ゲームソフト大手のアクティビジョンは、オンラインゲームで人種差別的な言葉が飛び交うのを禁止するため、プレーヤーが差別的な発言をした場合は、通報できる機能を追加した。これらは問題を緩和するために、企業が数日でできる工夫だ。