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新型コロナウイルスの感染拡大が一旦の落ち着きを見せる中、オフィスを再開する企業が増えてきた。しかし、通勤や、密閉した環境で働くことに不安を覚えている人も多い。企業は身体的健康だけでなく、情緒的・心理的健康にも配慮した対策を実施する必要がある。本稿では、オフィスを再開する際に取るべき5つの行動を紹介する。


 米国の企業は、いま多くの州が経済活動の再開に向かいつつあることを受けて、新型コロナウイルスへの感染を予防しながら社員を出勤させるための計画を練り始めている。そのために、勤務スケジュールや職場の座席配置、来訪者への対応、エレベーターの使用や食べ物のデリバリーに関する方針など、さまざまな要素について慎重な検討がなされている。

 たしかに、職場を再開させる際は、職場の体制や業務プロセスの準備を整えることが必要だが、企業が気を配るべきなのは、社員の身体的健康だけではない。情緒的・心理的健康も同じくらい重要だ。しかし、この問題が論じられることは、残念ながらあまりに少ない。

 いま、ほぼ誰もが不安を感じている。正常でない状況と不確実な未来に直面したときに不安にさいなまれるのは、自然な反応だ。

 ウェーバー・シャンドウィックとKRCリサーチの調査によれば、半数近くの会社員は、安全が確保されない段階で出勤を命じられるのではないかと恐れている。会社の行く末、とりわけ自分の雇用について、不安を抱いている人も半分以上に上る。

 企業が社員の不安の原因に対処しようとせず、社員の精神衛生のマネジメントを助けることを怠れば、コロナ禍以前の生産性とエンゲージメントを取り戻すことは難しい。

 多くの企業は、これまでの取り組みを強化する必要がある。社外のメンタルヘルス・プログラムを補うために、社内でストレスと不安と不確実性に対処する能力をいっそう高めるべきだ。

 とはいっても、専門的な訓練を受けたメンタルヘルス専門家の力を借りるなと言うのではない。社員の不安について啓蒙し、不安を敏感に察知し、不安を解消する能力を築く必要があるのだ。

 本稿では、人的資源、企業文化、組織変革に関するコンサルタントとしての経験に基づき、職場再開に伴う社員の不安をやわらげるために、企業が取るべき行動を5つ紹介したい。この5つの点は、企業が職場再開の計画を立てるための枠組みになると同時に、企業の取り組みの進展度を評価する基準にもなる。