●情報の流れを管理する

 最初に下さなければならない決定の一つは、この状況を同僚に、どのように、どれくらい伝えるかだ。すでに問題が広く知られているなら(家族の死がニュースになっていたり、癌治療が視覚的に明らかだったりする場合など)、職場に最初に伝えるのは自分でありたいものだ。

 プライベートな問題だから秘密にしておきたいと思うかもしれないが、この種の問題は誰にでもあることで、同僚の思いやりが大きな支えになることがある。また、最初に情報を伝える人間になることで、正確性を確保する助けにもなる。

 メンタルヘルスの病気の場合、自分がオープンに語ることで、ほかの人のためにも、この問題のマイナスイメージを払拭したいと思う人もいるかもしれない。しかし、自分ではなく家族がメンタルヘルスを患っている場合は、その家族のプライバシーを考える必要がある。また、病気になったのが子どもだと、あなたに重要な(あるいは長時間労働を要する)仕事を任せられないと、同僚に思われてしまう恐れがある。

 現在進行中の問題を明かすことは、過去の問題を明かすのとは違うことも理解しておきたい。あまりに感情的な側面を見せると、相手はきまずい思いをしたり、あなたが求めていない特別待遇をしたりする恐れがある。

 とりわけプライベートな情報は、最も緊密に仕事をしてる同僚にだけ知らせるといいだろう。そうすれば、あなたの仕事ぶりに変化が生じたとき、それに気づいて、理解し、便宜を図る必要があるかどうかを判断することができるだろう。

 あなたがマネジャーなら、ほかにも検討すべきことがある。「上司だと、自分の状況を話しすぎてしまうリスクがある」と、ロンダは言う。あまり詳細には踏み込まず、「声をかけてくれてありがとう。時間が経ったら、もう少し詳しく話します」くらいにしておくのがいいだろう。

 家庭でも、どこまで話すべきかについては、同じガイドラインに従うといいだろう。子どもが相手のときは、年齢など、追加的に考慮しなければならないことがある。

 まずはパートナーと、どのような選択肢があるかを話し合おう。2人が大事だと考える価値観の確認から始めるといい。

 我が家では、子どもたちが就寝したあとに、夫の兄の訃報が入ってきた。そこで夫と話し合い、子どもたちに伝えるのは朝まで待つことにした。

 また、母親である筆者が話をすること、なるべくありのままに話すこと、そして子どもたちに悲しむ時間を与えることを決めた。筆者が話をすることで、子どもたちは実兄を失った父親を慰めるプレッシャーを感じることなく、伯父の死を悲しむことができた。

 ●自分の希望と期待を明確にする

 自分が直面する問題を同僚に伝えるとき、周囲に求めることと、求めないことを明確にしよう。たとえば、「ちょっと頭がいっぱいで、アドバイスや手伝いの申し出を受けても対応できません。ただ、私の話を聞いてもらえれば十分です」などと伝えるといいだろう。

 絶対的なニーズは、関係者全員に明確にしておくべきだ。あなたが子どもの面倒を見なければいけないときの、託児所に迎えに行く時間などである。

 どのコミュニケーションツールを使うかも決めておこう。ナターリヤは恋人が自殺したとき、職場の同僚2人にだけ直接伝えた。そのあと自分のチームにメールで知らせると同時に、まだ非常につらくてその話はできないので、これまで通りに接してほしいと頼んだ。

 多くの人は、つらいとき仕事を続けることが助けになったと語った。ただしそれには、目の前のニーズと、感情的なウェルビーイングの線引きをする必要がある。「自分にはどうにもならないことが起きているとき、自分がコントロールできる仕事があるのはよいことだった。仕事では物事を達成できる」と、ロンダは振り返る。

 誰かを世話したり、自分の健康のために仕事を休んだりする必要があるときは、きちんと伝えれば、希望通りの手配をしてもらえるだろう。「私が家族と一緒にいる必要があるとき、誰も問いただしたりしなかった。それが私の最大の願いだった」と、ナターリヤは言う。