●毎日、自分のケアをする
日々、セルフケアの時間を持つことは、危機のときに絶対に必要なことの一つだ。
どのくらいの時間をかけるかは調整する必要があるかもしれないが、毎日ケアすることを忘れてはいけない。場合によっては、セルフケアの時間は10分に減らしてもよいが、トラウマが大きくなりそうな場合は、もっと時間をかける必要があるかもしれない。
デレクは、「大きなイベントに行き、(来場者を)楽しませることが仕事の一部であるときは、セルフケアが一段と重要になる」と語る。「私の場合、毎朝ジョギングをして、午後は静かに考える時間を持って頭をリフレッシュする時間を必ず1時間確保した」という。
セルフケアは、瞑想や日記、ギター、運動などなんでもいい。ナターリヤの場合、「精神的に深呼吸ができる場所をつくり、自分のやっていることや、自分のやり方を客観的に見つめること」だった。あるクライアントは、癌治療の後、ダンベルに夢中になったという。「仕事をちゃんとやるためには、体を鍛えないとね」
セルフケアは、自分のことをよく知る機会になる。昔の心理状態に戻ってしまうきっかけと兆候がわかるようになるのだ。自分の思考を変えられることは画期的なパワーだ。筆者が話を聞いた人の多くは、自分と子ども向けにプロのセラピーを受けることを勧めるとともに、セラピーにつきまとうタブー意識を払拭するために、それをオープンに話した。
実際、本稿で示すインサイトは、メンタルヘルスの専門家のサポートに代わるものではない(筆者はそのような専門家ではない)。プロに相談したほうがよいような問題を抱えている場合は、是非そうすべきだ。忙しい人には、オンラインセラピーがある。
●一人で抱え込まない
自分の経験を話してくれた人たちはみな、一人だったらその試練を乗り越えられなかっただろうと言っていた。夫婦の場合、それぞれ得意なことに基づき責任を分担した。「私は感情的な面で多くを担い、夫は力仕事で多くを担った」とロンダは語る。
海外出張が多いアニークは、パニック障害に陥った10歳の娘ジャズミンのために、セラピーの予約を毎週金曜日に入れて、夫エリックと一緒に娘に付き添えるようにした。出張がないときは、早朝から大きな仕事を片づけ、夕食から就寝まではジャズミンと時間を費やせるようにした。夜、洗い物をするのはエリックの仕事だ。3ヵ月後、2人はジャズミンをホームスクールにすることを決め、エリックが休暇をとって先生役を引き受けた。
マネジャーの場合、自分のチームを頼りにすることが、お互いにとって恩恵をもたらした。家庭での役割が増えたあるクライアントは、「子どもにとって継続性が重要だった。私の部下たちは、以前よりもずっと能力が高くなった。私の不在が、彼らに活躍の場を与えたのは間違いない。私は昇進さえした」と言う。
信頼する長年の友人に頼る人もいる。この種の小さなグループは、トラブルに陥った友人を受け入れ、問題を隠すプレッシャーから解放し、責任ある行動を取るのを助けてくれる。
離婚と子育てと依存症治療に同時に見舞われたクライアントは、次のように言っていた。「親しい友人は、物事をはっきり言ってくれる。私は自分のすべてをさらけ出すことができた」。アニークの場合、彼女の出張中は、友人が交代で家族をサポートしてくれた。
家族の危機を乗り越えたら何が起こるのか。困難が完全に過去のものになる場合もあれば、新しい日常の一部になる可能性もある。
多くの場合、以前よりも私たちを成長させてくれる。筆者のクライアントのほとんどは、これまでになく健康になり、仕事で昇進したり、恋人やパートナーとの関係が強くなったりしたと言う。
そして彼らは「恩返し」ならぬ「恩送り」をする。自分がしてもらったように、周囲に親切な手を差し伸べ、メンターやスポンサーになり、余計な助言をせずに相手に耳を傾けるのだ。
「こうした経験は誰もがいつかするものだと気づくと、周囲にもっと気を配れるようになる」とロンダは言う。「すると職場は、もっと人間的に場所になる」
HBR.org原文:Working Through a Personal Crisis, July 06, 2020
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