
デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す企業が増えてきたが、その多くが苦戦している。組織の階層や部門間の壁を超えて、技術、データ、プロセス、組織変革能力という4つの領域から最高のメンバーを結集させる必要があり、どこか一つでもお粗末だと頓挫しかねないのだ。DXの成功は人材にかかっている。本稿では、それぞれの領域でどんな能力が求められるのかを論じる。
筆者らは長年にわたり、数百に及ぶデジタルトランスフォーメーション(DX)への関与、助言、研究を行ってきた。その過程で、真のDXがいかに困難を極めるか、そして成功要件は何かに関する見地を得てきた。
DXは気弱な人がやるべき仕事ではない。悲しい現実だが、これまでに多くの取り組みが――その他一般の変革プログラムと同じように――失敗している。
成功のためには、ほとんどのリーダーの認識よりもはるかに広範な取り組みを結集し、調整することが求められる。技術、データ、プロセス、組織変革能力――相互に関連し合うこれら4領域のうち一つでもお粗末であれば、よく練られたDXであっても頓挫しかねない。
そして、説得力のあるビジョンを確立し伝える、計画を立てて臨機応変に調整していく、苦労しながら細部を詰めるといった非常に重要な部分は、すべてが人にかかっている。
DXで何より求められるのは、人材だ。技術、データ、プロセスの領域から協働できる者を集め、変革を起こせる強いリーダーを据え、優れたチームを編成する――これは実際、DXを検討している企業が取れる唯一にして最重要の手段かもしれない。
もちろん、最高の人材がいても成功が保証されるわけではない。しかし、いなければ、ほぼ必ず失敗するのだ。
4領域それぞれで必要となる人材について、順に検討していこう。