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新型コロナ危機のさなか、多くの企業がさまざまな支援に乗り出した。そうした行動は社会に恩恵をもたらし、顧客ロイヤルティや従業員のモチベーションを高める要因にもなるだろう。ただし、それが本業とは無関係の一時的な支援にとどまれば、好意的な評価が長続きしないだけでなく、うわべだけの取り組みだと批判される可能性すらある。いまこそ、自社のパーパスを行動指針として、自分たちのリソースを最大限に活用できる長期的な取り組みを行うべきだと筆者らは主張する。


 家電量販店チェーン、ベスト・バイのヒューバート・ジョリー前CEOは数ヵ月前、本ウェブサイトへの寄稿の中で楽観的な主張を披露し、コロナ禍という試練に向き合うためにいち早く行動した多くの企業を称賛して、ほかの企業のリーダーたちにも「パーパス(存在意義)を追求する人間的なリーダーシップ」を発揮するよう促した。

 この寄稿に対してビジネス界から共感が示されたことは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う危機の中で、非常に印象深い出来事だった。

 しかし、その後次第に、企業がその場限りの人道的行動を取るだけでは満足してもらえなくなってきた。人々は企業に対して、継続的に、思慮深く、うわべだけではない対応を求めるようになっている。そうした行動を通じて、広範で長期的な影響を生み出すことが期待されているのだ。

 ベスト・バイからフェイスブックまで、パーパスに突き動かされて行動している企業の多くが、人道的な取り組みに対して直接的に資金を拠出したり、自社の製造ラインを転用し、需要の高まっている医療関連物資(手指消毒液や人工呼吸器など)を生産したりしている。

 このような行動は立派なものだし、コミュニティや顧客などの利害関係者に恩恵をもたらしたことは間違いない。また、自社にとっての恩恵も見過ごせない。会社の評判がよくなって顧客ロイヤルティを向上させたり、社員のやる気を高めたりする効果も期待できる。

 それでも、このような取り組みが生む好影響は限定的なものにとどまるし、活動を長期間続けることも難しい。その最大の理由は、危機のときに割ける予算に限りがあることだ。それに、この種の活動には、うわべだけというイメージもつきまとう。多くの場合、本業との関連がないからだ。

 小切手を切ったり、ほかの資源を活用したりすることは、どの企業でもできる。しかし、企業の危機対応がとりわけ大きな価値を持つのは、その会社が社会に恩恵を及ぼしつつ、自社の中核事業として過去も現在も同様の活動を行っていて、未来にもその行動をずっと継続するだろうと、利害関係者が思える場合だ。

 パーパスは、(真剣に向き合えば)その会社の存在理由を簡潔に、そして明瞭に表現できる。それは、社員と顧客と納入業者とコミュニティと株主をうまく結束させ、社内のスローガンを生み出し、外の世界と関わる際の枠組みをつくり出せる。リーダーはパーパスから勇気と確信を得て、不確実で不安な時代を乗り切っていける。