
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、リーダーは、毎日のように新たな試練が持ち上がる状況で、正解のない難しい決断を迫られている。筆者は、未曾有の危機に直面するいま、ビジネスの本質に立ち返る必要性を説く。それはすなわち、自社のパーパスを明確にして、パーパス・ドリブンの経営を徹底することである。
「私たちは、どのように人々の人生に関われるかによって、成功の度合いを測定している」
――ボブ・チャップマン著The Value of Identifying Values(2012年)より
私たちはわずか数週間の間に、ほとんど誰も経験したことのない危機に飲み込まれた。それ以前の行動パターンは、ことごとく一時停止や見直しを余儀なくされた。
このような状況に置かれれば、いら立ちや困惑、無力感、恐怖心、不安、心配が湧き上がってくるのも無理はない。どのように行動すべきか、途方に暮れている人も多いだろう。
宿泊・外食グループのカールソン、家電量販店チェーンのベスト・バイの元CEOである私は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした不確実な日々を乗り切ろうとする多くの企業トップや幹部たちと意見交換し、過去に例のない状況で行動したり、意思決定したりしなくてはならない数々の企業の動きを注視してきた。
日に日に新たな試練が持ち上がり、新しい決断を要求されるなかで、誰もがこの状況に何とか対処しようとしている。「店舗や工場やオフィスを閉鎖しなくてもよいのか」「社員への給料の支払いを、いつまで継続すべき(あるいは継続できる)のか」といった判断も下さなくてはらない。
現在、CEOや企業が直面している問題は、煎じ詰めれば、このような状況でどのようにリーダーシップを振るうべきなのかということだ。