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企業が社会にもたらす真の価値は、既存の財務情報では十分に測れない。社会や環境にもたらした負のインパクトを解消するためのコストが計上されていないからだ。筆者らの調査では、これらの隠れたコストが利益を上回る企業も少なくない。本稿では、「インパクト加重会計」の導入を提唱する筆者らが、事業活動が社会と環境に与えるインパクトを正しく算出する必要性を説く。


 この数年、国際線を運航している大手航空会社の大半は、健全な利益を計上している。しかし、筆者らの計算によると、この黒字は幻想にすぎない。

 たとえば、ルフトハンザ航空とアメリカン航空が環境に与えているダメージは、それぞれ23億ドルと48億ドルに上る。こうした環境コストを利益から差し引いて計算すると、両社は赤字ということになる。

 どうして、この現実が十分に認識されていないのか。それは、企業が社会と環境に及ぼしている利益とコストを計算する方法がまだ確立されていないからだ。筆者らはこれまで、その状況を変えようとしてきた。