
マインドフルネスがいくつもの効果をもたらすことは科学的に証明されている。しかし、自分の感情をいくらコントロールできても、チームの環境が悪ければ、その恩恵を十分に得ることはできない。筆者は、チーム単位でマインドフルネスを実践すべきだと主張する。メンバー全員のウェルビーイングと仕事の満足度の向上につながるからだ。
科学的研究によれば、マインドフルネスは、ストレスと不安を和らげ、レジリエンス、拡散的思考、仕事への満足度、集中力、リーダーの行動の柔軟性を高める効果があるようだ。しかし、単に個々人がマインドフルネスに取り組むだけで十分なのだろうか。
筆者らは、組織とリーダーのマインドフルネスについて長年研究してきた経験を基に、さまざまな局面におけるマインドフルネスの有効性を訴えている。
だが、個人やチームが仕事で成功できるかどうかに関しては、個人がせっかくマインドフルネスを実践しても、チームの文化によってその効果がたいてい打ち消されてしまう。職場で常にいじめの標的になっていたり、有害な環境のチームで仕事をしていたりすれば、個人がみずからの感情を制御する能力を高めるだけでは十分な効果が得られない。
そこで、筆者らはチーム単位のマインドフルネスも提唱している。
個人でマインドフルネスを実践している人は、自己認識が高まり、物事をあるがままに受け止める能力が高まる。それと同じように、チームでマインドフルネスに取り組めば、そのチームは、自分たちを一つのチームとして認識し、そのようなあり方を受け入れる能力が高まる。チーム全体として、そのチームの目的、課題、役割、力学、構造を認識できるようになるのだ。
そのような認識を持てるのは、チームとして頻繁にこれらの要素に注意を向ける――しかも、オープンな姿勢で、あるがままに物事を受け止める――ことの結果だ。
この活動は、一人ひとりのメンバーが独自にマインドフルネスを実践するのとは違う(もちろん、そうした個人単位の活動にも利点はあるのだが)。重要なのは、チームがみんなで一緒にマインドフルネスに取り組むことなのだ。
集団レベルのマインドフルネスを達成できているチームは、明らかにメンバーのウェルビーイングへの関心が強い。そして、そのようなチームでは、チーム全体の課題と目標を皆が理解していて、メンバーの間にどうしても形成される力学を認識し、それに対処することができる。
筆者らがさまざまなチームと仕事をしてきた経験から言うと、そのようなチームは、有害な内部対立をあまり経験せず、心理的安全性も高い。直接対面して活動するにせよ、バーチャルで活動するにせよ、集団レベルでマインドフルネスを実践できているチームは、そうでないチームよりも好ましい結果を得られる。そうした傾向は、危機の時には特に顕著だ。
筆者らはこの5年間に実施してきた研究を通じて、個人レベルのマインドフルネスに3つの重要な側面があることに気づいた。許容、探求、メタ自己認識である。この3要素は、集団レベルのマインドフルネスの重要な特徴でもあることがわかってきた。