前号はオフィスの生産性、今号はサプライチェーンの競争力、それぞれの再検証・再構築について特集しました。コロナ禍により、企業はそうせざるをえなくなったわけですが、この危機を直視して次に備えることを、特集では提案しています。


 コロナ禍による貿易制限により、製品や原材料の供給ショックが起き、多くの企業でサプライチェーンが機能不全となりました。そこで、特集1番目の論文では、企業の生き残り策として、自社の脆弱性を見極め、供給ベースを多様化し、中間在庫・安全在庫を保持することを勧めます。

 この施策を、効率性の追求と同時に実行すべく、プロセスの改善を図る中で進めることを提言します。

 具体的には、自動化の推進、新技術の活用、連続フロー、付加製造です。前号の在宅勤務対策と同様に、競争力向上のためには、もっと前から着手すべきことでしたが、結果的にコロナ禍が後押し。いまがやるべき時なのです。

 特集2番目の論文は、サブタイトル「労働から安全衛生、環境まで、リスクに全体で取り組む」という点からの「サプライチェーンの持続可能性を高める方法」を論じます。

 いまや企業は、サプライチェーン全体でサステナブルな手法を採用する責務を負っていますが、その完徹は容易ではありません。末端のサプライヤーまでサステナビリティをどう浸透させるか。多国籍企業3社への実態調査から、ベストプラクティスを探ります。

 3番目の論文は、暗号通貨ネットワークを支えるデジタル記録管理技術として知られる、ブロックチェーンを活用した競争力向上策です。7つの先進企業のブロックチェーン活用事例から、トレーサビリティの強化、効率やスピードの向上、資金調達の利便性などにおける、効用と課題を明かします。

 より現実的かつ迅速にサプライチェーンの競争力を高めるには、デジタル技術を活用することです。その具体策を提言するのが、ボストン コンサルティング グループの内田康介氏による特集4番目の論文です。

 この分野で世界に後れを取る日本企業の現状を踏まえて、(1)データを収集・統合して一元管理する、(2)部門別・機能別の壁を越える、(3)トップマネジメントが先導する、の3つが要諦だと論じます。

 特集の締めは、パナソニック専務執行役員、コネクティッドソリューションズ社社長の樋口泰行氏に、サプライチェーン再構築のための具体策を伺いました。

 樋口氏は、デジタル・トランスフォーメーション(DX)に加えて、その前段階での、企業文化と社員の意識改革が重要だと指摘します。現場の力が強い日本企業なればこその課題です。自社での経験を踏まえて、仕事をより標準化する改革が不可欠と主張します。

 巻頭論文は、景気後退への対策としてのジョイントベンチャー(合弁事業)戦略を論じています。M&A(合併・買収)より低リスクで、迅速な戦略です。事業の部分売却や統合等の具体施策を通して、いかに資金調達したりシナジー効果でコスト削減したりするかを企業事例で示して、いま役に立つ論文です。