●筋肉ではなく脂肪を落とす
スピードを落とすことの一環として業務のスリム化があるが、それは周辺的な部分に限られる。これは、危機のために必要以上に性急かつ大幅に人件費を削減して「筋肉」に切り込むという、いまでは常識となっている考え方に反するものだ。
価格の下落を利用して、賃貸契約やサプライヤーとの契約を再交渉するのは構わない。だが、レイオフや解雇を検討するのではなく、主に業績管理を通じて人件費の削減は最小限にすることを考えなくてはならない。
メイアは「当社は、競合他社のように筋肉や骨ではなく、脂肪をカットした」と話す。それによって、トラベルパックは強さと柔軟性を維持している。
●新しいデータを鋭い視線で観察する
X24ファクトリーの創業者兼CEOのミロ・モーチネクによると、ロックダウンが導入されて数日以内に、家具の需要が40%も急落したという。
「しかし、過剰に反応するのではなく、あらゆる種類の新しいデータを観察することから始めた。イタリアに目を向け、同国の最悪のシナリオが当社の主要市場であるドイツにどう当てはまるのかを確認した。求職状況を調べ、当社のサプライチェーンのどの部分でレイオフが起きているのかを把握した。また、自動車や旅行など他業種がどのような影響を受けているかを調査した」
当初は2008年の不況の再来のように思われたが、毎時データを監視していくと「ロックダウンから2週目の週末に、我々の集中モニタリングで、需要の驚くほど爆発的な増加が確認された」とモーチネクは言う。
ロックダウンによって人々は住宅の改修を進め、生活空間を屋外に移していたことがわかった。屋外用家具の売れ行きは他のカテゴリーの損失を補填する以上に伸び、それに応じて「メッセージングを微調整しただけだ」とモーチネクは話す。
●実験によって社内の弱点を見つけ、準備を整える
企業はマーケットプレイスだけでなく、社内の弱点についても精査を重ねるべきだ。外的ショックがもたらす組織の混乱に備えることができて初めて、方針を維持することができる。
「3月11日に、自分たちの弱点を把握するために全従業員が在宅勤務をするという『避難訓練』を行った」と、トラベルパークのメイアは振り返る。
リモートワークは同社では前例がなく、彼らはすぐに問題点を特定した。ホームオフィスの場合、エアコンがなく窓を開け放つと通りの騒音に悩まされたり、インターネットの接続状況が悪かったり、デスクと椅子がないケースもあった。
メイアは問題解決に当たるチームをつくり、スペイン全土でロックダウンが実施された週末には、500カ所のホームオフィスに必要な設備を導入した。