Illustration by Giulia Neri

日々の不安が増し、大きなストレスを抱えると、日常生活はもちろん、仕事においても最高の結果が出せなくなることはすでに知られている。マインドフルネスをはじめ、ネガティブな感情をコントロールしてストレスを軽減させるアプローチはさまざまあるが、筆者らは呼吸法が大きな効果をもたらすと言う。本稿では「スカイ呼吸瞑想法」に関する実験の結果から、感情と呼吸形態の関係、副交感神経が機能する仕組みを解説しつつ、呼吸法の有効性を説く。


 米国海兵隊の士官ジェイク D. はアフガニスタンを車で走行中、地雷を踏んだ。足元を見ると、両脚の膝から下がほぼ失われていた。その瞬間、彼は若手士官向けに書かれた書籍で学んだ呼吸法を思い出した。

 その呼吸法のおかげで、彼は気を失う前に、落ち着いて部下の安全を確認し、助けを求めるよう指示し、自分の脚に止血手当を施し、脚が上を向くように下支えすることを忘れなかった。もしそうしていなかったら、出血多量で死んでいただろうと後で言われた。

 そのような極端な切迫状態のジェイクを助けたくらいだから、同じような方法を使って、より一般的な職場のストレスから身を守ることができるのは間違いない。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック社会正義を守る戦いが重なり、人々が日々感じる不安は増すばかりである。そして、そのストレスによって最高の仕事をする能力が妨げられていることが、複数の研究によって示されている。

 だが、正しい呼吸法を用いることで、ストレスに対処し、ネガティブな感情をコントロールする方法を身につけることができる。