筆者らは、最近発表した2つの研究で、いくつかの異なる手法を比較し、ある呼吸法が即時および長期の両方で、ストレス軽減に最も効果的であるという結果を得た。
我々、イェール大学の研究チームが実施した1つ目の研究では、ウェルビーイング向上を目的とした3通りの介入の効果を評価した。
・呼吸法:筆者らの実験では「スカイ呼吸瞑想法(SKY Breath Meditation)」と呼ばれるプログラムの効果を測定した。同プログラムでは、落ち着きとレジリエンス(再起力)を誘発するための呼吸と瞑想の包括的なエクササイズを、数日間にわたって学習する。
・マインドフルネスに基づくストレス軽減法:「瞬間」を自己判断せずに意識を向けるよう、自分自身を訓練する瞑想法。
・感情的知性(EI)の基本を学ぶプログラム:感情認識と感情制御を行う能力を高める手法を教えるプログラム。
実験では、参加者をプログラムのいずれかを行う3つのグループ、およびコントロールグループ(介入なし)に無作為に分けた。実験の結果、メンタルヘルス、社会的つながり、ポジティブな感情、ストレスレベル、抑鬱状態、マインドフルネスにおいて、スカイ呼吸瞑想法を行った参加者が最も効果を実感した。
アリゾナ大学で実施された2つ目の研究では、ストレスに対する認知の仕方を変える従来の対処法を教えるワークショップと、スカイ呼吸瞑想法とを比較した。
どちらのワークショップも参加者による評価に差はなく、社会的つながりが大幅に向上した。しかし、ストレス、気分、誠実性への即効性という点ではスカイ呼吸瞑想法のほうが有効であり、3カ月後に再度測定した時にその効果はさらに強化されていた。
参加者にはワークショップの前後に、ビジネス会議でプレゼンテーションを行うのと同程度の重圧を受けるタスクを疑似的に実行してもらった。
認知の仕方を変えるワークショップを終えたグループは予想通り、ストレスの多いタスクを目前にして呼吸数と心拍数が上昇した。それに対して、スカイ呼吸瞑想法を実施したグループは呼吸数と心拍数が安定し、同プログラムによって、ストレスの多い状況を目の前にした時に感じる不安への「緩衝材」を身に付けたことを示唆している。
つまり、彼らの感情がよりポジティブな状態にあっただけでなく、より明確に思考し、目の前のタスクを効果的に実行できたことを意味する。
これと同様に、トラウマに苦しむイラクとアフガニスタンの退役軍人を対象とした筆者らの研究では、スカイ呼吸瞑想法がわずか1週間で彼らの不安レベルを通常の状態に戻しただけでなく、丸1年経った後もメンタルヘルスへの好影響が持続していたことが明らかになっている。