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従業員のモチベーションを高める方法として、金銭的なインセンティブを与えるだけなく、その仕事が社会や環境に貢献すると伝えることも有効だと言われる。しかし、それは本当なのだろうか。仕事をプロソーシャル(向社会的)な目標と結びつけるようなメッセージを安易に発すると、むしろモチベーションを低下させることが判明した。


 環境保護、貧困撲滅、社会正義の推進など、仕事におけるみずからの行動が社会の改善に貢献していると考えると、意欲をかき立てられる。最近の研究では、それが強力な動機付け要因にもなることが示唆されている。

 実際、かつては従業員のモチベーションを高める方法といえば金銭的なインセンティブと考えられたが、仕事をプロソーシャル(向社会的)な目標に結びつけることで、給料やボーナスを超えて人々のモチベーションを高めることが、研究で相次ぎ示されている。

 従業員は、善良な人間として、世界に積極的に貢献する組織のために働きたいと考えている。そのため、自身の行動がプロソーシャルな目標を促進する場合、より熱心に、より長い時間、報酬がより少なくても働くことがある。

 そのため、リーダーが社会にも会社にも利益をもたらす「ウィン・ウィン」の行動を取って従業員のモチベーションを高めようとする場合、プロソーシャルな言葉で訴えるのが得策だと、多くの人が考えるのは当然だ。

 従業員に仕事でエネルギー使用を減らしてもらうにも、配送ドライバーに車のアイドリングを控えるようにうながす際も、「地球の重要な資源の保護に貢献しよう」と言ったほうが「当社の重要なリソースの保護に貢献しよう」と言うよりもモチベーションを高めるように思える。

 しかし、それは事実だろうか。もちろん、行動変容をもたらす実際的な根拠としては、社会的な目標と比較して、それが道徳的に正しいようにも魅力的にも思えない。だが、それらは組織の動機が偽りでないことを非常に明確に示す。

 社会をよりよくしたいという願望に突き動かされているとあなたが主張しても、従業員はそれが本当かと疑問に思うかもしれない。しかし、シンプルで実際的な根拠を示せば、彼らは疑うことはないだろう。

 従業員のモチベーションを高めるには、プロソーシャルな目的意識によって鼓舞するほうがよいのだろうか。それとも行動変容をもたらすために、退屈だが偽りのない理由を伝えるほうがよいのだろうか。