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長期にわたり成功し続けるブランドと、忘れ去られてしまうブランドは何が違うのか。特にインターネットビジネスの世界では、ブランドの栄枯盛衰が激しい。筆者らは、eスポーツの世界で最も成功した『フォートナイト』の事例をもとに、長く愛されるデジタルブランドに欠かせない4つの戦略を導いた。本稿で提示する「MACE」のフレームワークは、伝統企業がデジタルサービスに参入する際にも大いに役立つ。


 ブランドを長く存続させる要因とは何か――この問いの答えを知っているかどうかによって、長期にわたり成功し続けるブランドと、やがて忘れ去られていくブランドの運命が分かれる。

 ほぼすべての企業は、みずからのブランドを確立するために多大な資源を割いている。しかし、それと同じくらい重要な問いを検討する企業はほとんどない。その問いとは、どうやってブランドの価値を守ればよいのか、というものだ。

 歴史を振り返ると、ほとんどの時代、ブランドの興亡は非常にゆっくり進んできた。1950年代以降、世界で最も価値のあるブランドランキングで上位に並ぶ企業は、オレオに始まりAT&Tに至るまで、ほぼ変わってこなかった。

 この傾向は、21世紀に入っても続いていた。ブランド・コンサルティング会社インターブランドの作成するランキングで、2000年から2010年の間にトップ10から陥落したブランドは2つだけだった。

 しかし、この傾向は変わったようだ。2010年にこのランキングでトップ10入りしていたブランドのうち、2019年の時点でまだトップ10に残っていたのは5ブランドにすぎない。

 インターネット時代にブランドの存続年数が短くなっていることの一因は、消費者の行動がデジタル化して、新しいビジネスモデルが登場し、多くの伝統ブランドが不意打ちを食らったことにある。

 とはいえ、デジタル志向のライフスタイルそのものに、レガシーブランドに対して敵対的な要素があるわけではない。事実、コカ・コーラは今日も世界有数の価値あるブランドであり続けているが、同社はなんと1892年に設立された企業である。

 では、ビジネスモデル、テクノロジー、消費者行動が劇的に変化しても生き延びるブランドは、ほかのブランドとどこが違うのか。一言で言えば、以下で述べるように、長続きするブランドは、レガシーブランドであっても適応力を持っているブランドだ。

 本稿では、筆者がこの5年間にわたってeスポーツ分野の起業家・専門家として活動してきた経験から学んだことを紹介したい。eスポーツのブランドはレガシーブランドとの相違点も大きいが、この分野のブランドが適応力を発揮して急成長を遂げた経験には、あらゆるタイプの企業にとって有益な教訓が含まれている。