標準的な戦略では
対抗できないリスク

 経営の優れた企業は、リスクへの備えができている。リスクの中には深刻なものもありえ、2010年のメキシコ湾岸原油流出事故、証券トレーダーによる不正取引、化学プラントの爆発が示すように、必ずしもうまく対処できるとは限らないが、リスク管理部門は概して、リスクを予測、評価、軽減するための手順策定に寄与する。

 とはいえ、世界最高水準のリスク管理体制をもってしても、あらゆる事態への備えができるわけではない。

 リスクの中にはあまりにも現実離れしていて、個人、集団を問わず、あらゆるマネジャーの想像を超えるものもある。しかも企業としては、仮にかすかなリスクが頭をよぎったとしても、「まさか起きないだろう」と考えたなら、対処のためにケイパビリティや経営資源に投資することには前向きにならないだろう。