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キャリアに関するアドバイスとして、「自分らしさを大切にせよ」や「自分の強みを活かすことを考えよ」などの言葉を耳にすることは多い。だが、そうした定番の助言の中には鵜呑みにすると危険なだけでなく、正反対の行動を取ったほうがよいものもある。本稿では、よく見られる4つのアドバイスの問題点を指摘し、代替案を提示する。


 キャリアを築き始めたばかりの若い人向けに、就職活動を成功させる方法や、相手に好ましい印象を与える方法、壮大な職業上の野心を実現する方法などを指南するアドバイスは事欠かない。しかし、あまり指摘されることがないが、定番のアドバイスの中には、実は鵜呑みにしないほうがよいものも多い。

 非常によく耳にするキャリア関連のアドバイスのいくつかは、現実には役に立たない。「自分らしさを大切にせよ」「自分の強みを活かすことを考えよ」「情熱を追求せよ」といったものがそうだ。

 この種のアドバイスは、直感的には正しそうに思えるかもしれないが、実際のデータや研究結果の多くに照らすと、それとは正反対の行動を取ったほうがうまくいくらしい。

 本稿では、黙殺したほうがよさそうな定番のアドバイスをいくつか挙げ、それに従わない代わりに、どのような行動を取るべきかを提案する。

「自分らしさを大切にせよ」

 これほど過剰に用いられていて、しかも弊害の大きなキャリア・アドバイスは、ほかにないかもしれない。

 仕事の世界では――とりわけ採用面接の場では――誰もありのままのあなたを見たいなどとは思っていない。人々が見たいのは、最良のあなた、つまり最も好ましい振る舞いをしている時のあなたである。たとえあなたが本当に言いたいこととは違ったとしても、相手が聞きたいことを語るべきだ。

 社会的なエチケットに従い、自己抑制を実践し、適切なイメージ戦略を実践すれば、採用される可能性を高めることができる。それに対し、「自分らしく」振る舞えば、わがままだとか、尊大だとか、自己陶酔に陥っているといった印象をもたれかねない。この点をまとめたのが以下の表だ。

 ●代わりにどうすべきか

 採用面接などの重要な局面では、自分の対外的イメージをマネジメントし、コントロールすることが得策だ。偉大な社会学者アーヴィング・ゴッフマンが述べたように、他人から見られたいように振る舞うべきなのだ。それが100%正真正銘の自分でなくてもよい。

 印象に関する研究によれば、最善のアプローチは、場の空気を読んで、自分に何が期待されているのかを感じ取るというものだ。そのうえで、ほかの人たちの期待を裏切らないように振る舞うのだ。

 自分が置かれている状況を注意深く観察しよう。たとえば、既存の市場を激しく揺さぶる新興テクノロジー企業の採用面接を受ける時に着ていく服装は、大銀行などの保守的な企業の面接を受ける時とは違ってしかるべきだ。

 といっても、自分の原理原則を曲げろとか、相手を騙せと言っているのではない。感情的知性をしっかり発揮して、その会社の社会的エチケットを尊重することが大切だ。

 5年後、あなたがその会社に採用されて、社内で地位を確立できていれば、そのような配慮は必要なくなるかもしれない。しかし、既存のルールを壊すためには、まずそのルールに沿ってゲームをプレーする必要がある。たとえあなたの行動ルールのほうが優れているとしても、採用面接はそれを面接担当者に納得させる場ではない。