「情熱を追求せよ」
人生で何を成し遂げたいかを明確に理解しているのは有益なことだが、往々にして、情熱を追求してうまくいくのは、その人の情熱の対象が雇用市場のニーズ、および本人の才能と合致している場合に限られる。
それに、人の情熱は、一般に思われているより移ろいやすい。今年のあなたは写真に情熱を抱いているかもしれないが、来年になれば、情熱の対象が科学や執筆やアニメに変わっていても不思議でない。
自分が好きな業種で働く機会ばかり見て、視野を広げることなく、異分野で自分を成長させてくれる機会に目を向けない人は、将来のキャリアを後押しできる職に就くチャンスを得られない場合が多い。
ひらすら情熱を追求すると、自己発見の貴重な機会も失う。自分が本当は何を望んでいて、何を望んでいないのかを詳しく知り、得意なことや楽しく感じることに偶然巡り合う機会を得損なうのだ。
肝に銘じておこう。情熱を追求することは、自分を守るための戦略という性格を持つ場合がある。情熱を追求すれば、自分の快適ゾーンの中にとどまり、自分の長所を活かせるが、成長の妨げになりかねない。
●代わりにどうすべきか
一般的に、若い人ほど、多くのトレードオフに直面する。
20代の時は、実際に就ける可能性のある職に関心や適性を合わせ、学習と成長の機会を得ることを真剣に目指すべきだろう。やがて30代になると、目先の報酬より、長い目で見た業績を挙げることに力を注ぎたいと思うかもしれない。いずれの段階でも、硬直的な態度を取るのではなく、柔軟に行動したほうがよい。
みずからの強い関心は「持っていて損のないもの」程度に考えておいて、その関心を生産的な形で解き放つのに適した機会が訪れるまでは、いわば待機状態に置いておこう。自分の情熱を追求するよりも、あなたを成長させることに情熱を注いでくれる人たちを見つけることのほうが有益だ。
幸い、こうしたトレードオフは、年齢とともに弱まっていく。
まとめると、いまあなたができる最善のことは、可能な範囲で最善の選択を行うことだ。具体的には、選択肢を増やし、目の前の選択肢のそれぞれについて長所と短所を慎重に検討するのがよい。
自分が何を大切に感じるかは、もちろん重要だ。自分の倫理観を裏切ってはならない。それを貫いたうえで、自分の潜在能力、関心、チャンスのかみ合わせを最大限高めることができれば、成功の可能性も高まるだろう。
HBR.org原文:4 Pieces of Career Advice It's OK to Ignore, October 15, 2020.