
それほど仕事ができるわけでもないのに「自分は優秀だ」と思い込んでいる部下を抱えて、困り果てた経験はないだろうか。自分を過大評価する認知バイアスは「ダニング=クルーガー効果」として知られるが、この問題を放置すると、本人の業績の問題だけでなく、優秀な社員のモチベーション低下にもつながり、組織全体に悪影響を及ぼしてしまう。本稿では、彼らに自己認識が欠如している原因を探り、行動を改善するための5つのアプローチを紹介する。
仕事の出来は「並」か、それ以下。にもかかわらず、「自分はものすごく仕事ができる」と思い込んでいる。そんな困った部下を持った経験が、ほとんどのマネジャーにあるはずだ。
これは、筆者が過去30年間にわたってコンサルティングを行なってきた中で、実際に最も多く目にしてきた課題であり、マネジャーをひどく消耗させるトラブル の種ともいえる。
実際の成績は平均以下なのに、「自分は成功している」と認識する。こうした勘違いが起きるのは、なぜだろうか。
周囲から能力開発や改善に必要とされるリソースや明確なフィードバックをもらっていない従業員もいれば、本当は悪戦苦闘している現実を自分では正しく認識できない従業員もいる。
理由はどうあれ、リーダーが何とかしてこの状況に取り組まなければ、出来の悪い従業員の仕事は改善しない。組織としても、適切にサポートすれば優れた能力を発揮する可能性のあるチームメンバーの価値を失いかねない。
もっとやっかいなのは、標準以下の仕事を大目に見ることで、優秀なスタッフのモチベーションが低下し、場合によっては離職につながるリスクがあることだ。
だが、仕事ができない従業員の自己認識が欠如しているのはなぜか、その原因を特定できれば、次の5つのアプローチによって彼らの問題行動を是正することができるだろう。あるいは、そもそも是正することが可能かどうか、判断できるはずだ。