
感染症の流行で人と人との物理的な接触が制限される中、営業活動はバーチャルなツールを活用する方向にシフトした。営業先が旧知の既存顧客であれば、ビデオ会議や電話でも大きな問題は生じない。しかし、初対面の見込み客を相手にする場合、非対面のコミュニケーションで信頼を勝ち取るのは容易ではない。本稿では、バーチャルな環境で新規顧客を獲得するための3つの条件が示される。
新型コロナウイルスのパンデミックが続く中、ほとんどのB2B企業で既存顧客に対する営業は、ビデオや電話を使ってリモートでつながるバーチャルな方法に移行している。それも、驚くほど簡単に。
だが、新規顧客の獲得は非常に困難な状況が続いている。直接会う機会が制限されているかまったくない中、買い手は当然のことながら、自分たちのビジネスニーズをすでに理解している信頼のおけるサプライヤーに頼る。
売り手にすれば、見込み客へのアクセスが第1のネックになるということだ。また、もし見込み客にアクセスできたとしても、バーチャルだけのつながりでは、新規顧客獲得で生じる、さらなる課題に対処することが困難だ。その課題には、以下のようなものが挙げられる。
・買い手のニーズを把握する:バーチャルの販売では、複雑なニーズや潜在ニーズを見つけるために調査や質問をすることが特に難しい。
・買い手の信頼を得る:買い手は知り合いの営業担当者に心を開き、率直である傾向がある。特に重大な決定がからむ場合は、評判と歴史を積み重ねてきた売り手が有利になる。
・差別化された価値を示す:買い手のニーズと購買基準を正しく理解する必要がある。繰り返しになるが、これは既存企業に利点がある。
・買い手の意思決定を理解する:買い手の組織やプロセスが不透明だと、購買に影響力を持つ人物をバーチャルで見極めるのは特に困難だ。
売り手はこれらの課題を解消する方法を探しながら、より基本的な問いにも答えられなければならない。その問いとは、時間を何に投じるべきか(あるいは投じるべきではないか)ということだ。
以下の3つは、完全にバーチャルな販売環境で成長を遂げるための必須条件である。
既存顧客の拡大に焦点を当てる
確固たる顧客基盤を持つ売り手は、既存顧客を大切にすることに過剰なほど注力することで利益を得ている。
見込み客へのアクセスと獲得を制限されているのは、自分たちだけではない。競合も同様の課題に直面しているので、自分たちの既存顧客にアクセスされにくいのだ。結果として、ニーズが満たされていない自社の既存顧客に対して、販売を強化する好機を迎えている。
売り手は、既存製品の活用や製品の提供範囲の拡大、顧客組織内での地域や事業部門を超えた成長の機会を探ることができる。時間をかけて築き上げた専門性や経験、信頼がいま、大きな利益をもたらすだろう。
「無酸素地帯」の見込み客には近づかない
必要性や緊急性のない見込み客に費やす販売時間は、無駄に終わるのが常だ。また、代替品との差別化ができていないと、成約率は低くなる。バーチャルな販売の世界では、こうした状況は「無酸素地帯」であり、もともと低い成功率がゼロになるのだ。
さらに、買い手に不要な製品を押し付けることは、売り手の評判を悪くする。たとえ製品自体は必要とされていても、見込み客を将来的に獲得できる可能性が低くなる。