製品の差別化と販売戦略の見直しで
適切な見込み客にリーチする

 すでに明白なように、見込み客を創出するには、代替品と差別化された製品を持っていることが必須である。その前提を満たしたうえで、成約を勝ち取るためには、販売戦略をつくり直す必要がある。

 対面での販売は、バーチャルの販売よりもはるかに寛容だ。有能な営業担当者は、見込み客と対面しながら欠点や障害を克服することができる。しかし、バーチャルではそれがはるかに困難だ。

 そこで、下記の効果的な販売方法がさらに重要性を増している。

 ●新規顧客を「見つける」だけでなく「見つけてもらう」ことを重視する

 パンデミックの以前から、買い手は売り手と接触する前にデジタル情報を利用して、課題やソリューション、サプライヤーについての知識を身につけるようになっていた。パンデミックはこの傾向を加速させ、売り手のデジタルプレゼンスの重要性をいっそう高めている。

 売り手はオンラインコンテンツを継続的に分析・改善してデジタルプレゼンスを向上させることで、見込み客にとって有益かつ関連性がある存在になった。他にも、検索エンジン最適化(SEO)によるコンテンツの可視性の向上、ソーシャルメディアへの継続的な投稿、オンラインコミュニティを通じた関係構築といった方法もある。

 ●紹介を活用する

 紹介の有効性はよく知られている。特に現在は、紹介が見込み客にアクセスするうえでのネックを取り除く強力なツールとなっている。紹介を通じて、顧客から得た信頼が見込み客に伝わるのだ。

 顧客の証言やケーススタディは効果的だ。より有効なのは、顧客と見込み客をつなぐバーチャル座談会や、営業担当者のビジネス上のネットワークを介した見込み客への快い働きかけである。

 ●つながりをパーソナライズする

 新規顧客へのアクセスが制限されているので、売り手が見込み客に対して、自分を印象づけるチャンスをもう一度得られる可能性は低い。そのため、売り手はベストを尽くさなくてはならない。

 まず、アクセスする前に見込み客と相手のビジネスについて可能な限り多くを学ぶこと。また、似た状況の既存顧客で有効だったことを把握し、関連するアイデアを見込み客に対しても提示する。

 バーチャルな打ち合わせでカメラをオンにし(見込み客がそうしていない場合でも)、売り込もうとするよりも相手の話に耳を傾ける。また、情報を求められた際にはすぐ対応し、競合他社と一線を画す価値を提供する。

 ●製品以外の付加価値を提供する

 不確実性が高まると、売り手が付加価値をつける機会が増える。買い手は理性的にも感情的にも、通常のビジネスニーズ以上のことを懸念している。見込み客は、自社のビジネスや業界に関する新しい知見を持っていたり、同様の状況にある顧客の動向を共有してくれたりする売り手との対話をいっそう求めているのだ。

 また、売り手が販売前に付加価値を提供すると、見込み客は自分たちの懸念事項を共有しやすい。これは潜在ニーズを顕在化させるうえで有効である。

 ●買い手の組織内の支持者を活用する

 売り手が新規顧客を獲得する際、営業先の組織に所属する個人と接触し、信頼関係を構築することから始めるケースが多い。その人物が、売り手が組織の他の意思決定者とつながる助けとなる。関係性が広がるにつれ、売り手は顧客のニーズ、競合他社、購買プロセス、意思決定の権限について新たな知識を得ることができるのだ。

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 本稿で紹介したような永続的に効果を発揮する販売戦略に従えば、売り手はバーチャルの販売が見込み客と既存顧客の双方にもたらす副次的な利点を活用することができる。地理は、もはや障壁ではない。売り手は、買い手と売り手のそれぞれの組織に属する専門家同士など、異なる場所で働く専門家を結びつけることができる。また、信頼を拡散してくれる既存顧客と見込み客とを、より簡単に結びつけることもできる。このことは、既存顧客が集客に直結するブランド価値をもたらす時、特に有益だ。

 バーチャルなつながりは、(長時間の対面ではなく)短時間で集中的なビデオによる打ち合わせを介した売買も可能にする。それは多くの場合、買い手により大きな価値をもたらすのだ。


HBR.org原文:How to Reach New Customers When You Can't Meet Them in Person, January 13, 2021.