すでに始めていることを
足がかりにする
新年の抱負が2月半ばまでに80%失敗する理由(現実的でないから)や、流行のダイエット法が効かない理由(長続きするものではないから)については、多くの文献に取り上げられている。
ここで、そうした説明を繰り返すつもりはないが、目標を立てる際に、なぜ自己改善よりも自己受容(セルフ・アクセプタンス)のアプローチのほうがよいか説明しよう。
自己改善だけを考えて目標を立てる場合、人はいまの自分を不完全で不十分な存在と見なしている。まるで解決する必要のある問題であるかのように、だ。
その延長線上で考えると、ダイエットやジム通い、新しい仕事、人間関係といった、外的なものすべてが、自分を治す薬か、自分というジグゾーパズルを完成させるピースということになる。
自分を「改善」することばかりに意識を向けると、自己判断や不安、その他多くの不快な感情を招く。それがためにならないことは、言うまでもない。
調査によれば、ネガティブ感情と先延ばしは正の相関にある。つまり、タスクの達成に自信が持てないほど、そのタスクを行わない可能性が高くなる。そのため、本当に行動を起こしたいなら、別のフレームワークで変化にアプローチする必要がある。
修正する必要がある点をあれこれ精査するよりも、今年は、すでに取りかかっていることの中で続けたい、あるいは発展させたいと思うことに意識を向けよう。
2020年に「寝る前にスマホをいじる代わりに本を読む」と決意して実行した人は、今年それを一歩進めて、新しい本を毎月2冊読むことにするのはどうだろう。どんな目標でも、すでに自信や満足を感じていることの「続き」だと思えば、自分のマインドセットが変わることに気づくだろう。
ずっと気軽に感じるはずだ。
なぜそうなのかは、科学的に説明できる。人の脳は、長期的欲求よりも短期的欲求を優先するようにできている。心理学者はこの傾向を「現在バイアス」と呼んでいる。いまこの瞬間に快感を得ることのほうが、後でもっと快感を得ることよりも重要なのだ。
これも、先延ばしの理由を説明している。ストレスの多いタスクを避けるのは、たとえ後で困ることになっても、いま気分よく過ごせるからだ。
目標を達成できる状態をつくるには、できるだけ安全で気楽で簡単に感じる目標を立てる必要がある。自分に優しくなることも、これまでの成功を喜び、その体験を重ねる選択をすることも、その方法の一つだ。