私は1日に3マイル(約4.8キロ)、ほぼ毎日歩いている。歩くことで生理的、精神的、感情的な恩恵を得ているのは、私だけではない。
ジャーナリストのフェリス・ジャブルが『ザ・ニューヨーカー』誌に寄稿した記事「歩くことはなぜ、私たちの思考に役立つのか」(Why Walking Helps Us Think)によると、散歩によって記憶力や注意力の検査結果が向上する。歩くことで、神経細胞のつながりが新たに形成され、通常は加齢に伴って進行する脳の委縮のリスクを軽減するという。
また、歩くペースを速くしたり遅くしたりすることにより、考えるペースを能動的に変えることができる。あてもなく考えをめぐらせたり、周りを観察したりすることが、新しいアイデアを生んだり、思いがけない洞察を得たりすることを促すのだ。
米国疾病管理予防センター(CDC)によれば、中程度から激しい運動(散歩を含む)を1回行うだけで、睡眠や思考、学習効果が向上し、不安に伴う症状を軽減させることができる。
屋外で運動することで、さらに恩恵を得られる。エセックス大学スクール・オブ・スポーツ・リハビリテーション・アンド・エクササイズサイエンスの上級講師であるジョー・バートン博士によると、わずか5分間自然に触れただけで自己肯定感や気分が向上するというのだ。
なぜ、それほどすぐに効果が出るのだろうか。バートン博士いわく、自然に触れることは、集中力とエネルギーの貯えを利用する「自発的注意」から、必要とする集中力やエネルギーが少なくて済む「無意識的注意」に切り替える一助になるからである。これにより、精神的な疲労から回復できるのだ。
チャールズ・ダーウィンにフリードリヒ・ニーチェ、ウィリアム・ワーズワース、そしてアリストテレスは皆、取り憑かれたかのように散歩をして、歩くリズムをアイデア創出につなげていた。どのような形式の運動でも脳を活性化させることが示されているが、散歩は創造力を向上させることが証明されている。
ただし、歩くのは簡単なことに見えるが、誰にとっても簡単とは言い切れないことは私も理解している。
歩くことが困難だったり、不可能だったりする可動性の問題を抱える人もいる。安全に歩くことができない地域に住んでいる人や、1人で歩くことや外を歩くことが脅威に感じるようなトラウマを経験した人もいるかもしれない。
家庭ですべきことがあって独立性が制限されている人や、外気にさらされると具合が悪くなったり、リスクが増したりするような気象に関わる病気を患っている人もいるかもしれない。
このような条件の一つまたはいくつか、あるいはここに挙げなかった別の条件にあなたが当てはまるなら、不安を和らげ、頭脳の明瞭さを保ち、肉体的なウェルビーイングを維持するために何らかの手立てをあなたが見出せることを願う。