VCは人間中心の企業を支援すべき
単に女性が創業したという理由だけでにわかに出資しても、根本的な解決策にはならない。肝心なのは、定石となっている投資パターンや思考をVC側が取り除き、提示された事業計画に潜む可能性を見出せるようになることだ。
その実現を目指すムーブメントの一端となるべく、筆者らも独自のファンドを立ち上げた。スタートアップから売り込みがあった時、当然のことながら事業計画を熟慮し、厳しい質問を投げかける。同時に、人間中心のビジネスモデルも求める。社会的ニーズを満たすことに注力し、将来の雇用を増やし、心理的安全性やキャリア開発などの点で従業員に力を与える仕事文化を築こうとしている企業を探すのだ。
他の投資家も同様にこのビジネスモデルを追求すれば、誰もが勝者になれる。まず、女性が創業・経営するより多くの会社が出資を受けられるようになる。その結果、才能ある一流の働き手がそこに入社し、働き続けることを選ぶようになる。さらに、社会に恩恵をもたらす発想がビジネスを成功させる確率を高くする。
出資は最初のステップにすぎない。出資したスタートアップが成長し、コミットメントを確実に達成するのを見届けるかどうかは、VC次第である。
もっと「無干渉(ハンズオフ)」なVCを好む起業家もいるだろうが、VCが出資したスタートアップ企業の成長に深く関与することと、そのスタートアップが成功するかどうかは相関関係にあるとする研究結果もある。とりわけスタートアップが新しいビジネスモデルを築いている場合、その傾向は強くなるという(スタートアップをめぐる大失敗の例も当然ながらある。その場合、当該企業が何をしようとしているかに注意を払わなかった投資家にも非がある)。
もちろん、投資にリスクはつきものだ。VCがどこに出資するかを決めるに当たり、「確実な成功」をもたらすスタートアップなどない。しかし、もしこの1年にビジネス界が学んだことがあるとすれば、それはいまこそ劇的な変化が必要だということだ。そして、VCはその解決策の一部でなければならない。
HBR.org原文:Women-Led Startups Received Just 2.3% of VC Funding in 2020, February 25, 2021