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女性が経営するスタートアップへの投資は増加傾向にあったが、コロナ禍で目に見えて減少し、2020年は2.3%に低下したことがわかった。ベンチャーキャピタルは、ジェンダー格差がこのまま拡大していくのを見過ごすべきではない。もちろん、経営者が女性だという理由だけで投資する必要はない。スタートアップから提案を受けた際、事業の成長性だけでなく、人間中心のビジネスモデルを採用しているかを見るべきだと、筆者らは主張する。


 コロナ禍を通して、女性のキャリアが不均衡なまでに大きな打撃を受けていることに、関心が集まっている。

 多数の女性が働く業界で、より大規模なレイオフが行われた。マッキンゼー・アンド・カンパニーの分析によると、女性の仕事は男性の仕事の1.8倍も削減されている。また、家族の面倒を見る必要に迫られたことから、ますます多くの女性が労働市場から退出している。

 加えて、2020年の統計で新たに表面化した大きな変化がある。女性が率いるスタートアップに対するベンチャーキャピタル(VC)の資金提供が大幅に減少したのだ。

 VCファンディングの総額が減っただけではない。2019年にはVCファンディングの2.8%を女性主導のスタートアップが受けていたが、2020年には2.3%に下落したことが、ベンチャーデータベースであるクランチベースのデータで示されている。

 ここ数年、増加傾向が続いていた矢先のことだ。もちろん全体から見れば、まだ割合そのものが低いものの、それでも2.8%は過去最高だった。

 この急落の理由のすべてを明らかにするには、まだ時間が必要だろう。コロナ禍で投資家がリスクを嫌い、既存のネットワーク内にとどまることにした可能性があると推測する向きもある。既存のネットワークとは男性中心の「ボーイズクラブ」であり、女性が入り込むのは難しい。

 新規のスタートアップに出資する場合でも、たいていのVCは「パターンマッチングの習慣」を守って、過去に出資した会社と同じようなスタートアップを求める可能性が高い。そうなるとたいていは、男性の率いるテクノロジー企業となる。

 そもそも、VCの意思決定者のうち女性の占める割合はわずか12%程度であり、昨年のある調査によれば、女性のパートナーが一人もいないところがほとんどだった。VCの全パートナーのうち、女性の創業パートナーは2.4%にすぎない。『ファストカンパニー』誌によると、創業パートナーは「どこに出資するかを決める際、並外れて強い力を持っている」のである。

 ただし、女性のVCが決断を下す場合、女性主導のスタートアップに出資する確率は2倍になる。

 スタートアップの資金調達におけるジェンダー格差は、さらなる問題を引き起こす。女性の雇用に全般的かつ甚大な影響を与えるのだ。その上、ジェンダー格差を解消し、経済回復を実現する取り組みを鈍化させる可能性もある。