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顧客の消費プロセスを効率化する
この20年間、商品の多様化とそれを提供する販売チャネルの裾野は広がり続けてきたが、世界的に見て、大半の消費財の実質価格は下落し続けている。その半面、耐久性の向上や不良品の削減によって、品質は着実に向上してきた。
そのおかげで消費者は、多種多様な商品をこれまで以上に安く、さまざまな店舗を利用して手に入れられるようになった。にもかかわらず、こと消費、すなわち商品やサービスの使用については、なぜこうもいらいらさせられることが多いのだろうか。
たとえば、自社向けにカスタマイズされたコンピュータが、市販のプリンターや別のコンピュータ、ネットワーク・ソフトウエアとうまくつながらないことがよくあるのはなぜなのか。車の修理は単純なプロセスにもかかわらず、コミュニケーションの齟齬、整備工場を往復する労、待ち時間、修理ミスなどを、なぜ何度も味わわなければならないのか。何千もの商品の在庫を保管している店で、熱心な買い物客が求める品を見つけられず、たびたび無駄足を踏むのはなぜなのか。
そして、かように面倒な消費プロセスを手助けしてくれるのが、実のところ、大して役に立たないヘルプ・デスクやカスタマー・サポート・センターなのはなぜなのか。消費という行為は簡単に満足を得られるはずのものだが、なぜこれほどまで時間をいたずらに費やし、煩わしさを経験しなければならないのか。
その必要もなければ、そうあるべきでもない。コンピュータを起動させてからの問題は顧客が解決すべきであり、そのために顧客の時間が費やされることで、自社の時間と金が節約されると考えているかのようだ。しかし、その逆こそ正解なのだ。
実際、商品やサービスの価値を提供するシステムを効率化し、買いやすく、また使いやすく工夫することで、実質コストを引き下げ、時間を節約している企業が増えつつある。これらの企業では、そのシステムの改善を通じて、顧客に関する理解を深めると共に、そのロイヤルティを高め、ユーザー・フレンドリーとは言いがたい競合他社の離反顧客を自社に引き寄せている。
このようなイノベーターには共通の特徴が見られる。すなわち、世界じゅうのメーカーがリーン生産方式を導入し、製造プロセスから非効率を排除しようと努めてきたのと同様に、消費プロセスの効率化に尽力している。
1990年代の初め、我々はトヨタ自動車の超効率的なプロセス管理を説明するため、リーン生産方式という言葉を普及させた。そして我々は、いまこそ、これを補完するうえで必要かつ必然なものとして、「リーン消費」(lean consumption)を認識すべき時代が訪れていると考える。