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あなたの会社には、組織が危機に陥ると颯爽と現れ、どんな問題でも解決してくれる「英雄」がいるかもしれない。それは称賛されるべきことではなく、組織が未熟な証拠だ。危機が起きるから英雄が誕生するのではなく、英雄に依存しているから危機がなくならない可能性がある。また、ヒーローとして称えられるために、不必要に自分を追い込んだり、自分の頑張りを不自然にアピールしたりする従業員もいる。こうした不健全な企業文化を脱して、成熟した組織に生まれ変わるために、4つの点に注目すべきだと筆者は主張する。


 最近、ある会社の経営会議に招かれた。その会社はピンチに直面していた。大口顧客の注文対応をしくじったのだ。経営幹部は、ダメージを最小限に抑え、顧客に機嫌を直してもらい、体制を立て直すトリアージモードに入っていた。

 会議の終わりに、いつもの精鋭チームの動員が決まった。「うちの会社の特殊部隊だ」と、好感を込めて呼ばれるマネジャーたちが集められ、配置につき、数時間後には事態を収拾してくれるだろう。するとCEOのテッドが言った。「やれやれ、うちの会社は危機の時はすごいな。どうして問題が起きる前に、こういう働きができないのだろうか」

 まただ。あまりにも多くの組織が、万年、火事場の騒ぎに見舞われている。「失敗から学びたい」と言う割に、混乱が収まると、さっさと次のことを考えて、多くの危機はみずから招いていることに気づかない。

 テッドの会社の場合、営業(注文を受ける場所)とサプライチェーン(注文が処理される場所)の技術システムが統合されていないため、長い間、「つぎはぎだらけ」の応急処置で、何とか注文が処理されていた。ただ、今回は、非常に大口注文だったため、どの応急処置もことごとく失敗したのだ。

 こうした会社は長い間、従業員の英雄的な働きを頼りに物事を成し遂げてきた。危機の時だけではない。日常的な期限やプロジェクト、日々の業務でさえも、くたくたになるまで働き、徹夜し、熱狂的なプレゼンで結果を報告する必要性に駆られた人々によって彩られていることが多い。

 英雄文化が続くのは、次々と危機が起こるからだと考える人は多い。しかし、よく見ると、正反対のことが明らかになる場合がある。つまり、英雄的な仕事ぶりを称える文化が、危機の頻発を招いているのかもしれない。あなたの会社にその傾向があるなら、次の点に注目してみよう。