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米国の政権交代が、環境に対する取り組みに大きなインパクトを与えている。ジョー・バイデン新大統領は連邦政策の中心に環境を据え、地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」にも正式復帰した。米国が気候変動対策にあらためてコミットしたことで、いますぐ気候変動対策に取り組まなければ、企業は未来に生き残ることができないという事実を突き付けられた形だ。米国が気候変動対策のリーダーシップを握る時代に、企業のリーダーは具体的に何をすべきかを論じる。


 ジョー・バイデン米大統領が2021年1月に署名した一連の大統領令は、連邦政策の中心に環境を据えるものだった。それには十分な理由がある。米国経済の未来の競争力がかかっているのだ。気候変動対策は、雇用創出を後押しし、将来のシステミックショックを防止して、豊かな未来を約束する有効な方法だ。

 電気自動車(EV)や再生可能エネルギーのようなグリーン業界への投資が、私たちがコロナ禍から立ち上がる中で、国内総生産(GDP)を押し上げるよりよい方法になることを示すエビデンスは増えている

 米国が気候変動対策にあらためてコミットしたことで、いまや、世界経済の70%以上が温室効果ガスの排出量を実質ゼロとするネットゼロエミッションを目標に掲げたか、掲げつつあることになる。米国企業、そして米国で事業を行うあらゆる企業にとって、そのメッセージは非常に明白だ。すなわち、ネットゼロの未来に生き残り、成功するためには、いまこそ気候変動対策をスケールアップしなければならない。

 米国が気候変動対策のリーダーシップを握る新たな時代は、企業のリーダーにとって以下の7つを意味する。

 ●気候関連の規制が始まる

 世界がネットゼロに向かっていることは、不可避的なトレンドだ。すでに世界の多くの地域で、気候変動の影響が現実のものとして経験され、関連規制の導入が進められている。たとえば、欧州連合(EU)は2030年までに、温室効果ガスの排出量を少なくとも55%削減することを約束している。英国は、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止すると発表した。

 米国では、バイデン大統領とカマラ・ハリス副大統領率いる政権が「2050年ネットゼロ」という目標を発表する見込みだ。これには、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で米国が約束した2030年までの達成目標が含まれる。現在は、上下両院で民主党が多数派を握っているため、政府目標がこれまでよりシームレスに具体的な規制やインセンティブとして導入され、企業はそれに沿った経営戦略を取ることを余儀なくされるだろう。

 企業はどうすれば、こうした規制に慌てることなく対応できるのか。最もよいのは、地球の平均気温の上昇を産業革命以前の水準から1.5度以下に抑えるという目標に沿って、科学的根拠に基づく排出量削減目標を経営戦略に盛り込むことだ。そうすれば、自社のバリューチェーン全体のどこで、どのようにネットゼロに向けた措置を講じればよいかが明確になるだろう。

 アマゾン・ドットコムやアップル、フォード・モーター、マイクロソフト、ウォルマート、ウーバー、ベライゾン・コミュニケーションズなど米国の大手企業の多くはすでに、2050年までにネットゼロを実現する経営戦略を取っている。こうした企業は「1.5℃目標」(Business Ambition for 1.5°C)や「クライメイト・プレッジ」(Climate Pledge)、中小企業向けの「SMEクライメイト・ハブ」(SME Climate Hub)といったイニシアティブを通じて、目標達成にコミットすることを誓ってきた。