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誰もがメールの受信箱が空の状態になることを目指しているが、メールがひっきりなりに届く現代のビジネス環境で、その願いを叶えることはほぼ不可能だ。しかし、夢の実現に前進することはできる。自分の受信箱を保護することではなく、相手の受信箱に意識を向けて、無駄なメールが届かないようにする行動を実践すればよい。本稿では、「思いやりあるメール文化」を育むための3つの習慣を紹介する。


 私たちは皆、同じように達成しがたい夢を追いかけている。整理され、最新の状態に保たれた、メール受信箱が空になることだ。しかし現実的に考えて、受信箱を空の状態にすることは難しく、時として不可能でさえある。どれだけサブフォルダをつくろうと、ニュースレターを解約しようと、メールは届き、結局は思いとは逆の方向に引き戻される。

 自分の受信箱だけをどうにかしようと考えてしまうが、それだけでは不十分だ。この際、メールの常識を180度覆そう。その秘訣は、意識を自分の受信箱ではなく「相手の」受信箱の保護に向けることだ。

 この逆転の発想は、意外に思えるかもしれないが、効果がある。誰もが実践すれば、チームが協力し合うことでメールの総量を減らすという、筆者らが「思いやりあるメール文化」と呼ぶものが実現する。お互いを優先し合うことに、焦点を移行させよう。

メール作法の基本

 同僚の受信箱を保護するための第一歩は、基本を正しく理解することから始まる。では、おさらいしよう。

・送信ボタンを押す前に、宛先を吟味して絞り込む。本当に全員とやり取りする必要があるか。不要な相手は外そう。必要になれば、いつでも後から追加できる。

・簡潔に理路整然と書く。いかなるメッセージであっても、その内容は明確かつ具体的であること。何を聞きたいのか、何を承認してもらいたいのか、何を伝えたいのだろうか。

・シチュエーション・アウェアネス(状況認識)を働かせる。それは本当にメールでやり取りする必要がある内容か。電話やビデオ通話で話せないのか。次に話をするタイミングや、次の定例会議まで待つことができるメッセージも多いはずだ。

 こうした基本は不可欠な項目として守りながら、思いやりあるメール文化に近づくための3つの戦略的習慣、すなわち、ブラインドカーボンコピー(BCC)、適切なタイミング、プラグインを取り入れよう。

BCCを検討する

 多くの人がBCCを完全に見過ごしている。その存在は知っているが、いつどのように使えばよいかがわからないのだ。実際には、頻繁に2人あるいはそれ以上の人たちがやり取りするグループメールで活用できるし、活用すべきである。

 受信者同士が直接やり取りする必要のない、あらゆるメールにBCCを使おう。これにより会話が不必要に拡散したり、脱線したりする可能性を排除できる。グループとして議論することが必要な場合には、メールではなくミーティングを検討しよう。

 BCCの使い方を理解するには、まずBCCの誤った使い方を知ることが重要だ。BCC欄に追加された受信者は他の受信者から見えないという機能ゆえに、その使用には賛否ある。密かに情報を漏らしたり、やり取りを監視する方法として利用されることもあるが、筆者らはそうした行為を勧めているわけではない。その作法はプロフェッショナルではなく、無礼で、不公平で、チームの信頼を容易に失うと考えている。

 したがって、誰にメールを送っているのかを、BCCの相手を含めて必ず本文に明記することが非常に重要だ。たとえば、このようにする。「デイビッド M. 様、ビバリー J. 様」あるいは「マネジメントチーム各位」と冒頭に記し、その人たちをBCC欄に入れる。この透明性によって信頼、明確さ、心理的安全性が生まれる。加えて、メールアドレスを知られたくない受信者を保護できる。

 また、BCCを活用することで、「全員に返信」であっという間に全受信者の受信箱が溢れてしまうリスクを減らすこともできる。たとえば、チャリティイベントや親睦会などの連絡メールを部署の全員に送るとする。全員を「宛先」欄に入れた場合、その1本のメールがグループ全体への膨大な返信メールの引き金になりかねない。

 より配慮のある方法を取るなら、全員をBCC欄に入れて、送信相手を本文に明記して送る。各人から返信を受け取りたい場合でも問題ない。受信者は送信者にそのまま返信できる。必要ならば返信内容をまとめ、BCCを使って1通きりのフォローアップメールをグループ全体に送るとよいだろう。