自分の限界を認めて、受け入れる

 筆者らが一緒に仕事をしてきた多くのリーダーは、男女を問わず、自分の限界や失敗を認め、それを受け入れても、恐れていた自分の弱さや屈辱感を抱くことはないと理解している。それどころか、彼らは自己防衛心が薄れ、本当の自分らしさを取り戻し、同僚との関係性を構築しやすくなった。

 自分の限界を認めて、受け入れられるようになるには、以下の4つのステップがカギとなる。

(1)ストレスにさらされている時、自分の体が何を感じているのかを把握することから始める。たとえば、「自分はより劣っている」「自分はより優れている」と感じた時は、子どもの自分が脅威を感じ、防御者が闘争・逃避反応を起こしているサインだ。また、恐怖や不満、焦り、怒りのように、ネガティブな強い感情も、防御者が現れていることを示している。

(2)自分が取り乱していると体で感じたら、落ち着いて自分を制御する。深呼吸して、自分の感情を口に出すことで、感情に翻弄されるのではなく、感情を客観的に観察することができる。また、体を動かすこと、特に振り子のように揺れるのも効果的だ。子どもを落ち着かせるために、本能的に抱きしめて揺さぶるのと同じである。

(3)自分を評価したり、批判したりするのではなく、自身のネガティブな感情や欠点を認めて、受け入れる。ネガティブな感情や欠点は自分の一部だが、すべてではない。自分を受け入れることができれば、防御する必要がなくなる。自分をコントロールして大人の自分になることで、どのような問題に直面していても、より思慮深く、思いやりを持って、賢明に対処する方法を考えられるようになる。

(4)苦しみに慣れる。苦しみは成長と変化のために欠かせないが、私たちはそれを危険なものだと考えてしまう。心理学者のレスマー・メナケムは、自分の恐れや弱さのために他者を抑え込み、否定し、非難する慢性的な苦しみを「ダーティペイン」とし、自分の思い込みを疑い、恐れに対峙し、自分の間違いに責任を持つことで生じる避けられない苦しみを「クリーンペイン」と定義し、両者を区別した。

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 アリスにとって最大の突破口は、彼女が最も打ちのめされ、無力感にさいなまれている時に訪れた。「突然、自分に対して感じていた最悪の部分は事実だが、それは私という人間の一部にすぎないことに気づいた」と彼女は話した。

 自分のすべてを受け入れることができて初めて、私たちは本当の意味で力を得ることができ、相手に対しても力を与えることができる。


HBR.org原文:To Lead Better Under Stress, Understand Your Three Selves, March 22, 2021.