疲労困憊していたことが浮き彫りになった

 新型コロナウイルス感染症の大流行が始まった時、ホラー映画の世界に身を置いているように感じた。眼前で見るみるうちに火の海が広がり、都市が丸ごと炎に包まれていくような感覚である。途方もない混乱が迫り来るにもかかわらず、茫然としてただ眺めるしかなかった。

 筆者は長年にわたってバーンアウト(燃え尽き症候群)の研究に携わり、数々の組織とともに対処に当たってきたが、このテーマの理解を深めるのに何より寄与したのは、2020年を生き抜いた経験だと思われる。しばらくの間、筆者は、「バーンアウトが深刻化している。みんな病んでいる」と警鐘を鳴らしていたが、やがて社会全体が突如として未曾有の状況に陥った。

 2020年4月までに26億人がロックダウン(都市封鎖)の対象となり、全世界の就業者の81%が全面的ないし部分的な職場閉鎖に見舞われた。知識労働者の大半は在宅勤務を開始した。その多くがZoomを協働のために用いたことで、Zoomを日常的に使うアクティブユーザーの数は、1000万人から2億人へと跳ね上がった。