バーンアウト(燃え尽き症候群)についての特集です。4年前に特集「燃え尽きない働き方」を組みましたが、コロナ禍で生活や働き方が激変し、問題はより深刻化しています。DHBR最新号は、組織での対策に比重を置いています。


 特集1番目の論文では、冒頭、日本の医療現場における直近の調査をもとに、「バーンアウトとは何か」を明確にします。最大の特徴は、使命感の喪失が引き起こす「病」、ということです。

 「燃えたかったのに燃えられなかった」不完全燃焼の意味に近く、喪失感や抑鬱感をもたらし、使命感や熱意を持って仕事に取り組む人こそ陥りやすい、と論証します。いくつかの対処策が説明されますが、筆者が体験的に把握した「突き放した関心」は、説得力があります。

 続く3つの論考は、斯界の第一人者たちによる分析です。バーンアウトの尺度として世界で広く採用されているMBI(マスラック・バーンアウト・インベントリー)の開発者であるクリスティーナ・マスラック氏らが、昨秋に実施した46カ国1500人超の調査をもとにしています。

「何もかもが急用のよう」「成果への重圧が高まり、誰も就業時間を守ろうとしない」「ウェブでの会議がひっきりなしに予定されている」など、引用される調査の回答例は、読者の皆様にも思い当たる節が多いのではないでしょうか。実態を踏まえ、職場全体で、どう対処すべきかを具体的に提言しています。

 特集5番目は、コロナ禍で突然の危機に追い込まれたボストン最大の病院がそれをどう乗り越えたか、救急診療科のマネジャーらが振り返っています。組織的な過労への対応や危機への備えなど、現場の当事者が提言します。

 特集6番目は、バーンアウトに陥ってしまった経営者が、その経験から得た教訓や、企業でメンタルヘルスに取り組むうえでの6つの論点を紹介します。

 特集の最後に登場するのは、テニスプレーヤーで、「日本一熱い男」と称される松岡修造氏です。

 意外にも、消極的で、物事をマイナスに考えてしまう性格という自己分析から、インタビューは始まります。精神的課題をメンタルコントロールで乗り越えてきたとのことです。そして、過去を振り返らず、いまを生きることがすべての問題を解決する方法だと語ります。松岡氏を身近に感じることができ、力付けられます。

 今号の巻頭は、"救世主"の論考です。コロナワクチンを開発・製品化したファイザーのCEOが、なぜそれを短期間で実現できたのか、内幕を明かします。

 リーダーの決断力と統率力、その意志に応えた社員の実行力、危機以前に培われていた稀有な企業文化など、多くのことを学ぶことができます。