
オフィスに集まって仕事をしていた時は、同僚にいつ、どのように声をかけるべきかを判断できた。しかし、出社勤務と在宅勤務が混在するハイブリッドワークが進む中、相手の状況を正確に把握することは難しい。チームズやスラックやメールを使えば、いつでも、どんな方法でも連絡を取れてしまうからこそ、デジタル・コミュニケーションの新しい規範をつくることが必要だ。本稿では、規範をつくり、それをチームで定着させる方法を紹介する。
オフィスで仕事をしていた時は、誰もがコミュニケーションの暗黙のルールを理解していた。
誰かが大きなヘッドフォンをしていたら、おそらく仕事に集中していて、最新ドラマのゴシップにじゃまされたくないということだ。あるいはチームとクライアントとの重要な会議が始まる直前なら、あなたは部屋に入る前に最後の質問をさっと済ませるだろう。
私たちは同僚を観察することで、こうしたコミュニケーションの規範を学んでいた。しかし、ハイブリッドワークに急速にシフトしているいま、デジタル・コミュニケーションの新たなルールをつくる必要がある。自由に使えるプラットフォームが増えるほど、デジタル・コミュニケーションは複雑になるようだ。
職場のデジタル・コミュニケーションで直面している課題を理解するため、筆者は2021年5月にクエスターと共同で「デジタル・コミュニケーションの危機」と題した調査研究を発表した。
オフィスワーカー約2000人を対象としたこの調査で明らかになったのは、70%以上の人が同僚からの何らかの不明瞭なコミュニケーションを経験していることだ。それにより平均的な従業員は、不十分な、あるいは混乱を招くデジタル・コミュニケーションのために週4時間浪費し、米国経済全体で年間平均1880億ドルも浪費していることになる。
この問題に苦労していた、ある組織の例を紹介しよう。その組織は、チームのデジタル・コミュニケーションのチャネルを評価するために筆者を招いた。その部門のリーダーは、締め切りの遅れ、メールの無視、チャットルームでの不快な会話の報告、同僚の間での受動的攻撃行動など、日常的に多くの機能不全が生じている理由を知りたがっていた。
問題のチームはコラボレーションツールをあらゆる方法で使用していたが、正しく使っていないことはすぐにわかった。このチームでは、マイクロソフト・チームズのチャットがビデオ通話によるコラボレーションを回避する手段となっていた。
また、メンバーは同じメッセージや文書を複数のコラボレーションツールで共有していたため、どのツールで何をすればよいのか、誰もがわからなくなっていた。さらに、タスクについてのコメントを10語程度のインスタントメッセージ(IM)で送り、それが意見なのか、行動を求める要望なのかを説明していないメンバーもいた。
最終的にチームと筆者は、それぞれのコミュニケーションチャネルを最も適切に使用するための規範を作成した。以下の通りである。