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肌の色が濃い人を差別する「カラリズム」は至る所で見られる。マーケティングの世界ではそれが顕著で、白人の美の基準がいまだに支持されている。多くの消費者が自分の価値観に合致するブランドを選択する中、業界の常識に流されて人種差別を助長するような活動を続けていたら、時代に取り残されるのは明白だ。本稿では、ダイバーシティ&インクルージョンを自社のブランドで体現するための4つのポイントを紹介する。


「彼女は色が濃すぎる」

 私はある企画のメインショットに、肌の色が濃い黒人女性が顔を洗っている画像を提案したが、クリエイティブディレクターに却下された。「今回のグローバルキャンペーンに、『それ』は使えない」

 実際、使われることはなかった。私はマーケターとして最初の仕事の1つで、カラリズム(colorism)──肌の色が濃い人に対する差別──の厳しい洗礼を受けた。当時私が働いていた会社では、コンテンツに肌の色が濃い人を起用することはなく、マーケティングチームにも有色人種はほとんどいなかった。

 近年、さまざまな業界のブランドがカラリズムの問題で非難を浴びている。たとえば、ニベアハイネケンダヴは、肌の色が明るいほうが優れているという前提を広めたとして批判された。

 マーケターは、ブランドが黒人やブラウンのコミュニティとつながって、彼らにサービスを提供できるように奔走している。ただし、彼らはまず、カラリズムがいまだに存在するだけでなく、構造的に存在していることを認識しなければならない。

 マーケティングでどのような人を取り上げ、どのような人のストーリーを語るかという選択の根底にある集団的なバイアスを、私たちがみずから打ち破らなければならないのだ。そこで、マーケターがカラリズムと向き合い、よりインクルーシブ(包摂的)なブランドを構築するための4つのポイントを紹介する。

 ●カラリズムに関する認識と教育を促進する

 直毛や、薄い唇と細い鼻が好ましいなど、白人の美の基準を支持して重視するカラリズムは、人種差別の産物だ。私たちが意識しているかどうかにかかわらず、カラリズムは蔓延している。

 CNNの依頼で行われた肌のバイアスに関する調査によると、米国の白人の子どもは、肯定的な特徴を肌の色が薄いことに結びつけ、否定的な特徴を肌の色が濃いことに結びつける。このバイアスは、彼らが成長するにつれて強くなる。

 ニューヨーク大学のアダム・オルター教授が3人の同僚と行った研究は、肌の色と、その人物が犯罪行為をしたかどうかという認識の関連性を示す「バッド・イズ・ブラック(悪いことをするのは黒い人)効果」を浮き彫りにしている。

 さらに、4000人以上の収入を追跡した最近の研究によると、肌の色が最も濃い人は、より薄い人に比べて、生涯収入が50万ドル以上少ないと考えられる。

 カラリズムと戦うためには、認識と教育が必要だ。大学のマーケティングのカリキュラムでカラリズムに言及する。企業はソーシャルやデジタルのスキルと同じように、マーケターの文化的な認識を深めるようなスキルアップを図り、そのトレーニングの重要な要素にカラリズムを含める。

 肌の色が明るい「ヨーロッパ中心主義」の特徴が好まれやすいという問題に対して共通認識がなければ、私たちは市場でのブランドの見せ方について、過去と同じ間違いをおかし続けるだろう。

 ●エージェンシーと提携するエコシステムを広げる

 マーケティングの企画を始動させる前に、誰がテーブルを囲んでいるかを考える。サービスを提供しようとしているコミュニティの洞察や声に耳を傾けているか。文化に敏感で、ダイバーシティをみずから体現しているエージェンシーと協力しているか。

 サプライヤーのダイバーシティを高める取り組みは極めて重要だ。大きな組織は、マイノリティが経営する企業を支援する余裕がある。マイノリティ企業は新型コロナウイルス感染症のパンデミックで苦戦しているが、彼らはエコシステムに不可欠な存在だ。サプライヤーを多様化すると、自社のブランドを提供するコミュニティも多様化し、新たな成長の機会が広がる。

 全米広告主協会(ANA)の最近の報告によると、会員の75%が組織全体でサプライヤーの多様化に取り組んでいる一方で、マーケティングと広告に特化した取り組みを行っている会員は40%に留まる。

 自分たちのエコシステムを拡大するために、ダイバーシティ&インクルージョンを中核的なパーパスとして掲げる代理店(ウィー・アー・ロージー、ザ・ジョイ・コレクティブ、ダイバース・アンド・エンゲージドなど)を見つけよう。

 クリエイティブ業界のダイバーシティ&インクルージョンを推進するパートナー(ADCOLORなど)と提携し、全米都市同盟やカラー・オブ・チェンジなど人種差別と戦う組織を招いて、クリエイティブのプロセスに参加してもらおう。