●「人種的に曖昧な」モデルに頼らない
人種的に曖昧なモデルや民族性を強調しないモデルは、2000年代初頭から目立つようになった。米国の人口構成の変化に伴い、ブランドは従来の一般市場(つまり白人)のオーディエンスを遠ざけることなく、多文化のオーディエンスと共鳴したいと考えるようになったのだ。
ルイ・ヴィトン、YSLビューティー、H&Mなど多くのブランドが、肌の色が薄くて民族性をあまり感じさせない、すなわち人種的な特徴が強くないモデルばかりを意図的に選んできた。中性的で「色が濃すぎない」モデルが、魅力的で望ましいとされている。
しかし、ここで、購買に大きな影響力を持つコミュニティが無視され続けている。1兆3000億ドルの購買力がある黒人消費者だ。
この点をある程度、理解している企業もいるようだ。2020年5月末に黒人男性ジョージ・フロイドが警察官に拘束されて死亡した事件の後、美容業界では、ソーシャルメディアで肌の色が濃いモデルの起用が増えた。
アイキュー・インサイツが70の美容ブランドを対象に行った調査によると、肌の色が濃いモデルを起用した画像は、2020年夏より前はわずか13%だったが、同年6月には約25%を占めた。しかし、7月には20%に減少。8月は16%だった。昨年夏にブラック・ライブズ・マター(BLM)の抗議運動が盛り上がって以降、多くのブランドが肌の明るいモデルを起用する傾向がある。
人種的に曖昧なモデルの起用をやめよう。コンテンツや番組に、肌の色が濃いモデルや俳優を意図的に配置して、その効果を継続的に測定し、四半期および年次ごとに進展を評価する。肌の色が明るい人だけを起用するという発想を乗り越えることによって、ブランドは固定観念を打ち破ることができる。
●商品の写真を意図的に選ぶ
「私たちのソーシャルメディアのコンテンツに、カラリズムの心配はありません」と、あるマーケティング部門のシニアリーダーは私に言った。彼は自分のブランドのインスタグラムのフィードを見ながら、「瓶の写真しかありませんから」と胸を張った。
どの投稿も、白い手が瓶を掲げていた。食材を持っているのも、サンドウィッチにナイフで商品を塗り広げているのも白い手。美味しそうに糸を引くグリルドチーズサンドを2つに割るのも白い手。すべての手が当然のように白かった。基準は白い手だ。
ストックされている写真素材にダイバーシティとインクルーシブが欠けていること、特に黒人の画像が少ないことは、ブランドが常に直面している課題の1つだ。ピーナツバターの瓶、ノートPC、書籍など、あらゆる製品の写真を決める際は、最初から意識すること。ストック写真に頼るのではなく、必要な写真を撮影するための予算を事前に確保して、意図的に黒い手を含める。
レンズの向こうにいる人々のことも考える。代理店のパートナーに対し、企画提案の段階で黒人や先住民、有色人種のフォトグラファーを含めることを条件とする。
カラリズムの助長や人種差別の根絶を約束したブランドが、どのようなリブランディングや新しい広告キャンペーンを展開するのだろうと、消費者は期待している。自分の信念にもとづく購買行動が、新しい標準になりつつある。より多くの消費者が、ブランドが自分たちの価値観を体現して、社会の変化を擁護することを求めている。
時代に取り残されるリスクを冒すか、それとも約束を守って業界の基準に挑戦するか。それを決めるのは、マーケターだ。
"Marketing Still Has a Colorism Problem," HBR.org, May 20, 2021.