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マネジャーとリーダーの役割は異なり、ミドルマネジャーは単なる管理者であるという考え方は根強いが、その発想は時代遅れになりつつある。現代のミドルマネジャーには、部下を管理するだけでなく、組織の上層と下層をつなぎ合わせたり、上層部の意思決定に直接影響を及ぼしたりするなど、リーダーのものとされる役割も担っているのだ。本稿では、ミドルマネジャーが「コネクティングリーダー」としてどのような役割を果たしているかを解説し、企業がコネクティングリーダーを育てるための3つのポイントを示す。


 ミドルマネジャーを凡庸な管理者と見なす考え方が広く共有されるようになって、すでに数十年が経つ。少なくとも1977年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』にアブラハム・ザレズニックの論文が掲載されて以降、そうした見方が広まっている。

 この先駆的な論文でザレズニックは、リーダー(壮大なビジョンを掲げてメンバーを鼓舞する人物)とマネジャー(決められた戦略通りに物事を実行するだけの人物)の間に明確な一線を引いた。

 このような考え方は、今日の多くのMBAプログラムや幹部教育プログラムでも教育内容の核を成している。マネジャーに対して、みずからを「アップグレード」して、リーダーに成長する方法を教えようとするプログラムが多い。

 しかし筆者は、みずからミドルマネジャーを務め、のちにミドルマネジャーを研究テーマにしてきた20年の経験を通じて、ミドルマネジャーに対して深い敬意を抱くようになった。

 ミドルマネジャーは、ビジネスを牽引するエンジンであり、物事を機能させるのに不可欠な歯車であり、会社の一体性を保つ接着剤でもある。しかも、リモートワークやハイブリッドワークが一般化し、社員同志の距離が広がる時代になって、ミドルマネジャーの重要性がかつてなく高まっている。

 ひときわ大きな成果を上げるミドルマネジャーは、人間味があって洗練されたコミュニケーションスキルを持ち、社内の異なる階層に属する人たちの意見の違いを仲裁し、合意できる点を見出すコツを心得ている。

 リーダーシップとマネジメントを別物と考える発想は、次第に古臭く、もっと言えば時代遅れになってきているように、筆者には思える。リーダーシップとマネジメントを再び統合し、ミドルマネジャーを「コネクティングリーダー」と位置づけ直すべき時期に来ているように思える。

 コネクティングリーダーという考え方においては、あらゆるリーダーがフォロワーでもあり、あらゆるフォロワーがリーダーでもあるという前提に立つ。企業の組織階層の真ん中に位置するミドルマネジャーたちは、(権限の小さいフォロワーの立場で)上層部の人たちとも結びつき、同時に(権限の大きいリーダーの立場で)下層の人たちとも結びつく。

 しかし、ミドルマネジャーがこのような役割を果たすことは容易でない。直属の部下に対しては能動的なリーダーとして行動し、上層部に対しては熱心なフォロワーとして行動しなくてはならないからだ。この両方を同時に実践することが求められる。しかし、現在一般的なリーダーシップ論とリーダー育成プログラムでは、この難しい「一人二役」が十分に考慮されているとは言い難い。

 たとえば、幹部教育プログラムはたいてい、受講生であるマネジャーたちにリーダーシップのスキルを身につけさせることに力を注ぐ。それにより、部下に影響力を振るえるようにすることが狙いだ。

 その半面、上層部に影響を及ぼすために必要なスキルは、おおむね無視されている。しかし、そのように「上層」と「下層」の両方に影響を及ぼすことを通じ、ミドルマネジャーは組織階層間の断絶を埋めて、一体性を高めることができるのだ。

 筆者はこのテーマに関する長年の研究を通じて、コネクティングリーダーとして成功するために重要な4つの行動を割り出した。以下では4つのケーススタディを通して、その一つひとつを紹介したい。

 ケーススタディでは、実践すべき重要な行動パターンを示すことに加えて、企業とミドルマネジャー自身が頭に入れておくべきリスクも指摘する。それぞれのケーススタディは、筆者が実際に話を聞いた実在のマネジャーの経験に基づいているが、プライバシー保護のために名前は仮名に変更した。