Martin Barraud/Getty Images

性別や人種による格差の是正が求められるようになり、医療の世界も例外ではない。しかし、大半の治験の参加者はいまだに白人男性が中心で、女性、高齢者、有色人種の割合は常に不足している。一般的な母集団を代表するような治験を実現するためには、どうすればよいのか。筆者らは3つの方法を提案する。


 治験の大半は、特定の疾患を持つ一般的な母集団を代表していない。参加者は白人男性が中心で、女性、高齢者、有色人種(特に黒人とヒスパニック系)の割合は常に不足している。米国では有色人種が人口の約39%を占めるにもかかわらず、治験に参加する患者に占める割合は2~16%だ。

 この低代表の問題は、モデルナが行った新型コロナウイルス・ワクチンの治験でも浮上した。米国の人口の13%を占める黒人が治験に7%しか参加していないことが明らかになると、モデルナは治験のペースを抑えて、有色人種の参加者を追加で募集した。

 モデルナの迅速な対応は、あくまで例外だ。治験が世間で精査されることはほとんどない。米国食品医薬品局(FDA)の承認に際し、治験の代表性は必要条件ではない。それを考慮して参加者を集めることは、時間も費用もかかると考えられてきた。多様性を確保した治験は義務ではなく、優先順位も高くなかったのだ。

 しかし、世界は一夜にして変わった。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、医療における格差にスポットライトを当てている。そうした問題に取り組むことが、研究者を含む医療のエコシステムにおいて、突然、優先順位が上がったのだ。

代表的な患者データをどのように作成するか

 治療を探求する組織にとって格差問題が新たな課題になったいま、代表的な患者データをどのように作成するか、さらには有色人種の患者にどのようにアクセスして治験に参加してもらうかを、考えなければならない。

 以下に提案する枠組みは、ハーバード・ビジネス・スクールのクラフト・プレシジョン・メディシン・アクセラレーターが主催するリーダーシップフォーラムに参加する疾病財団のCEOをはじめ、医療エコシステムのさまざまな分野のリーダー数十人のインタビューにもとづいている。