
黒人やアジア系に対する人種差別的な行為やヘイトクライムが増加する中、マイノリティがより孤独を感じやすい状況が生まれている。企業はこの問題と向き合うために、職場のDE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)を実現し、すべての従業員が帰属意識を持てる環境をつくる必要がある。本稿では、従業員の帰属意識を高めるために、組織、リーダー、マネジャー、一般従業員それぞれが取るべき行動を示す。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う混乱が続き、黒人の米国人が警察官に命を奪われたり、アジア系米国人へのヘイトクライム(憎悪犯罪)が増加したり、ジョージア州の人々が投票権を制限する動きと戦ったりする中で、米国社会において「帰属する」とはどのようなことかという問題は、これまでになく職場にも波及し始めている。
企業のCEO、取締役会、投資家、消費者、従業員は、人種的不正義に反対すること、そして職場の公正性を高めるために努めることを求めるようになっている。人種的・民族的アイデンティティに関係なく、すべての従業員が帰属意識を抱けるような職場をつくるべきだというのだ。
こうした背景の下、ビジネスリーダーたちはDE&I(ダイバーシティ〈ダイバーシティ〉、エクイティ〈公平性〉、インクルージョン〈包摂〉)を実現する理由となる「ビジネスケース」を知りたがることはなくなった。その重要性はすでに広く理解されている。リーダーたちはいま、この1年ほどの間に約束した意欲的な目標を達成するために、企業幹部やアドバイザーの力を必要としている。
CEOがそうした約束を果たすために大掛かりな変革を成し遂げようと思えば、社内のすべての人の力を借りなくてはならない。上級幹部やマネジャーに始まり、社内のあらゆる階層にいる従業員の力が必要だ。
しかし、どのような取り組みにせよ、幅広い支持を獲得することは、時として難しい。しかも、この1年間の経験から明らかなように、DE&Iの取り組みはひときわ大きな対立を生む場合がある。
DE&Iを専門とするグローバルな非営利シンクタンクのコークアル(旧称センター・フォー・タレント・イノベーション)では、「そんなこと、私に何の関係があるのか」という言葉を繰り返し耳にしてきた。黒人など1つの属性に焦点を当てた活動を行おうとすると、ほかの属性の人たちから、自分たちの出世やウェルビーイングを犠牲にして特定のグループを優遇しているように感じられかねない。
社内で変革への支持を取りつけ、複雑な変革をマネジメントするためには、属性に関係なくすべての従業員が帰属意識を持てるような企業文化を築くことが欠かせない。この点は、ビジネス界が社会全体に教えることのできる教訓だ。