Jupiterimages/Getty Images

オフィス再開の議論が進む中、不快な通勤を回避できる在宅勤務を謳歌している従業員は少なくない。子どものケアといった仕事以外の役割があっても、在宅勤務ならば時間の融通が効きやすく、リモートのまま仕事を続けたいというのは当然だろう。しかし、オフィス勤務で得られる利益は、組織だけでなく、個人にとっても恩恵があることが忘れられがちだ。あらためて対面で仕事をすることが、自分にどのような利益をもたらすかを再確認する必要があると、筆者は指摘する。本稿では、オフィス勤務が個人のワーキングライフの向上につながる理由を、組織文化、コラボレーション、パーパスの3側面から論じる。


 地域によっては新型コロナウイルスのワクチン接種がさらに進み、従業員がオフィスに戻ることを許可、あるいは要請する企業も出始めた。だが、オフィスに戻りたくないと思っている従業員も相当数存在する

 筆者はテキサス大学でパンデミック対策アカデミックワーキンググループの座長を務めているが、教職員やスタッフの多くが在宅勤務は生産性が高く、自分はそうした働き方を謳歌していると感じ、すべてとは言わないまでも多くの仕事をリモートで継続することを望んでいる。

 なぜ多くの人々が在宅勤務を好むのか、理由は明白だ。労働者にとって、昔から最大の苦痛の種として知られる通勤が不要になるからだ。

 通勤がなければ、自分の希望に沿って働く時間を選択したり、子どものケアなど仕事以外の役割をスケジュールに組み込んだりしやすくなる。これらの利益と比較すれば、ワークライフバランスの維持が難しくなるといった個人的不利益は、たいした問題ではないと多くの人が感じている。

 そのため、リーダーがオフィス再開に関する話を始めると、多くの従業員が抵抗感を覚えるのも無理はない。問題の核心は、在宅勤務による利益の多くが個人に恩恵をもたらす一方で、オフィス勤務で得られる利益は組織に恩恵をもたらすため、個人に対する効果が間接的になる点だ。

 もしあなたがオフィス勤務に戻りたくないと思っているならば、対面で仕事をすることは実際、会社にとってだけでなく、自分にとってどのような利益があるか、いま一度確認するのがよいだろう。以下に、オフィス勤務によってあなたのワーキングライフがどのように向上するか、3つの側面から論じる。